ロシア国旗を描いて「破って捨てる」……ウクライナの児童施設 カウンセラー「全て奪われた」 “子どもらしさ”取り戻すには
ウクライナ侵攻から1年がたち、今も子どもたちの日常を取り戻せていません。戦争の影響を受けた子どもは710万人超とされ、積み重なるトラウマで子どもらしさが失われているといいます。ウクライナ西部の児童養護施設とユニセフの担当者を取材しました。
■親を亡くした子も…30人が暮らす施設
ウクライナ西部のリビウにある児童養護施設を2月に訪ねました。
カウンセラー
「今日は学校がなかったけど、何をしてたの?」
子ども
「ロウソクを作ってました」
ここで暮らしているのは、東部などから避難してきた約30人の子どもたちです。中には、両親や保護者を亡くした子もいます。
■アートセラピーで「ロシアの国旗」
この日始まったのは、子どもたちが描いた絵から心理を読み取るアートセラピーです。カウンセラーが「今日は絵を描いてみましょう」と呼びかけます。
子どもたちは今日飲んだというコーヒーや、テーブルいっぱいのお菓子の絵を描き始めました。すると突然、2人の子どもが紙を破って笑い合いました。
カウンセラーは「ぐちゃぐちゃにしちゃって、どんな絵だったの?」と質問。1人の子が「国旗」と答えると、「あー、ロシアの国旗ね」と驚くふうでもありませんでした。
――なんでロシアの国旗を描いたの?
子ども
「破って捨てるためだよ」
カウンセラーが「それをやって楽になったの?」と確かめると、「うん」と返事がありました。
■カウンセラーに聞く…心の状態は?
カウンセラーに、ロシアの国旗を描いて破った心の状態について聞きました。
「破って壊す。その後に悲しみ、恐怖、もしくは希望を感じるのかもしれません。彼らは元々住んでいた場所にいた友達、住んでいた街や家、その場所のにおい、全てを戦争に奪われたのです」
侵攻から1年たっても、子どもたちの日常を取り戻せていません。
■ユニセフ「あまりにも早く成長した」
「子どもたちが最大の犠牲者」。こう話すのは、ユニセフ(国連児童基金)の担当者です。
ユニセフ・ウクライナ事務所のムスタファさん
「子どもたちの目を見ると、あまりにも早く成長してしまったことが分かります。この1年間、子どもとして経験すべき体験をしていないのです」
何層にも積み重なるトラウマで、子どもらしさが失われています。ユニセフ・ウクライナ事務所は、戦争の影響を受けた子どもは710万人を超えるとしています。ユニセフは180を超える支援施設などでサポートしています。
――もし明日戦争が終わったら、子どもらしさを取り戻せますか?
ムスタファさん
「難しい質問です。彼らが経験したことを話したり、自分の言葉で表現できる安全な場所を提供し、適切なカウンセリングを行えば、乗り越えられると信じています。ただそれは、長い道のりになるでしょう」
(2月24日『news zero』より)