海底から潜水艇の“破片”発見 潜水開始から数時間後に“爆発音” 専門家は…
タイタニック号を探索するツアーに出発後、消息不明となった潜水艇「タイタン」の破片が海底で発見されました。乗っていた5人は全員が死亡したとみられています。現地メディアは、潜水開始から数時間後に“爆発音”のようなものが検知されたと報じています。潜水艇で何が起きたのか、専門家に聞きました。
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深い海の中で5人が消息を絶ちました。捜索状況を伝える会見でもたらされたのは、悲痛な知らせでした。
アメリカ沿岸警備隊(アメリカ・ボストン、22日)
「私たちは(潜水艇)タイタンの5つの主な破片を発見した」
「これらの破片は(潜水艇の)耐圧室が大破したことを意味している」
捜索開始から4日。アメリカ沿岸警備隊は、カナダの無人探査機が「タイタニック号」の残骸から約500メートル離れた地点で、潜水艇の後部など大きな破片を5つ発見したと発表しました。
運営会社は声明を発表しました。
「5人は残念ながら亡くなったとみられる。彼らは真の探検家だった。私たちは喪失感で疲れ果て、深く悲しんでいます」
水深4000メートルの海底に眠るタイタニック号を目指した潜水艇タイタン。操縦していた運営会社のラッシュCEO、イギリスの富豪で冒険家のハミッシュ・ハーディング氏(58)、パキスタンの実業家ダウード氏(48)とその息子(19)、そして、フランスの探検家ナルジョレ氏(77)の5人全員が亡くなったとみられます。
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これまでの捜索で水中から音がたびたび感知され、“救助は搭載された酸素の残量との戦い”との見方もありましたが、何があったのでしょうか。
潜水艇は現地時間の18日に出発し、約2時間半で水深4000メートルのタイタニック号にたどり着く予定でしたが、出発から約1時間45分後、消息不明になりました。
それから4日、潜水艇の破片を発見しました。耐圧室の前方や後方の一部とみられる部分、船尾の部分とみられるものなどが見つかったといいます。発見場所は、タイタニック号の残骸から約500メートル離れた地点です。
現地メディアは「この海域で潜水開始から数時間後に、アメリカ軍の極秘音響探知機が“爆発音”のようなものを検知していた」と報じています。その音は“爆縮”によるものではないかとみられています。
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この“爆縮”について潜水艇に詳しい専門家に聞きました。
東海大学海洋学部 山田吉彦教授
「爆縮という(周囲からの)水圧で押しつぶされる形になったと思います。(水深は)おそらく3000メートルにもならない範囲だったと思います」
爆発音のような音が聞こえた時点で、潜水艇は大破したものとみられています。また現地メディアは「これまで捜索中に聞こえた音は、別の音だった」と報じています。
潜水艇で“爆縮”が起きたとすれば、その理由は何なのでしょうか。
東海大学海洋学部 山田吉彦教授
「本来、耐圧室の素材はチタンでできています。粉々に近い状態になっていたということは金属疲労が起きて崩壊してしまって、ということが考えられます。本来であれば(潜水艇の)金属がどういう状況に置かれているのかも、確認していく必要もあるところなんですが、これがどうもないがしろにされていたようです」
運営会社が、定期的な点検を怠っていた可能性があると指摘します。
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乗客の1人、フランスの探検家ナルジョレ氏の娘は…
「父は80年代、最初の探索に参加して以来、タイタニックが生きがいでした。捜索で彼らが発見されることを願っています。いずれにせよ父は…、彼は今いる場所で幸せなんだ…、そう思えば心強い」
そして「ニューヨークタイムズ」によると、操縦していたラッシュCEOの妻、ウェンディ・ラッシュさんは、沈没したタイタニック号の実際の乗客で犠牲となった夫妻の子孫だったことも明らかになりました。
それぞれの思いを抱きながら、5人はツアーに参加したとみられます。アメリカの沿岸警備隊は、原因究明のため5人の捜索を続けるとしています。