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オバマは再選されるのか~さまよえる大国

2012年1月1日 14:37

 12年、アメリカでは4年に一度の大統領選挙が行われる。焦点は、08年に「イエス・ウィー・キャン」を合言葉に大勝利を収め、黒人初のアメリカ大統領に就任したバラク・オバマ大統領が再選されるかどうかだ。

 オバマ大統領の支持率は現在、40%そこそこで低迷している。日本の首相と比べれば高いと思われるかもしれないが、2大政党で争うアメリカ大統領選では、やはり50%は欲しいところなのだ。

 最大のネックは厳しい経済情勢だ。失業率は先月やや改善したが、依然として8.7%と高い。景気失業対策に巨額の予算を費やしてきたにもかかわらず成果に乏しい状況が続き、国民の不満は高まっている。

 一方、国家財政は「火の車」で、11年度で約128兆円という巨額の財政赤字を抱えている。かといって、財政再建策は野党の反対で軌道に乗らず、また、国債の格下げなどの懸念が再燃する可能性もある。

 このような中、オバマ大統領は、公約としてきた11年中のイラクからの完全撤退は何とか成し遂げた。しかし、依然としてイラクの治安状況は悪く、「選挙目当ての無責任な撤退」との批判もある。また、医療保険改革やグリーンニューディールも思うような成果が上がっていない。

 こうした状況を見るとオバマ大統領の再選はかなり厳しい状況にあることがわかるが、対する共和党も候補者選びで混迷が続いている。

 本命視される前マサチューセッツ州知事のミット・ロムニー候補が、知事時代の政策やくるくる変わる言動で共和党保守派に人気がなく、今一つ抜け出せない中、次から次へ有力候補が浮上しては失言やスキャンダルで沈んでいった。現在は、元下院議長のニュート・ギングリッチ候補が支持率トップに浮上しているが、過激な発言に過去2回の離婚歴と、共和党内にも批判は少なくない。こうした中、急進保守派のティーパーティーからの支持を集める下院議員のロン・ポール候補ら「第3の人物」が今後浮上してくる可能性も否定できない。

 このような状態で共和党も強い候補者を立てられず、12年のアメリカ大統領選は「どちらがましか」という消極的な選択になる可能性が強まっている。支持率が低いオバマ大統領も、共和党の候補者との比較では優位に立つケースが少なくない。

 こうした中、オバマ大統領は、黒人やヒスパニック中間層から貧困層という堅い支持基盤に標的を絞り、動かない議会の責任を野党・共和党に押しつけるという守りの選挙戦術を取っている。共和党の各候補者も、オバマ政権の実績を批判する一方で、新たな国家再建のビジョンを提案できていない。

 ただでさえアメリカは、「テロとの戦い」の名の下に強行したアフガン・イラク戦争が国際的な威信を傷つけ、100兆円を超える戦費が財政を強く圧迫し、「リーマンショック」の震源地として経済的にも地盤沈下が激しい。一方、経済的、政治的にも中国やインドなど新興国が台頭してきている。

 こうした重要な局面で行われる12年のアメリカ大統領選が非常に消極的で内向きな選択に終われば、アメリカ覇権の時代に終わりを告げ、世界の勢力地図を塗り替えていく大きな節目になるかもしれない。