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米・銃規制対策を発表、国民の複雑な思い

2013年2月7日 16:41
米・銃規制対策を発表、国民の複雑な思い

 相次ぐ銃による犯罪から子供たちを守るため、オバマ大統領は1月、銃を規制する対策を発表した。その一方で、アメリカ国民には複雑な思いが…ニューヨーク支局・小野高弘記者が取材した。

 1月、アメリカ中西部・ニューメキシコ州の警察署では、氷点下12℃という寒さの中、長い行列ができていた。実はこの日、市と警察の合同による銃の回収キャンペーンが行われ、市民らが家にあるライフルなどを持ち込んでいた。回収された銃は、わずか2時間で約100丁。銃の回収キャンペーンは、アメリカ各地で行われているが、きっかけとなったのは、2012年12月に起こったコネティカット州の小学校での銃の乱射事件だ。26人もの児童らが犠牲となったこの事件は、アメリカ国民の銃への見方を変えつつある。事件の衝撃はあまりに大きく、今、銃の規制を認めるべきだという世論が強くなっている。

 ところが、銃規制を叫ぶ声とは裏腹に、南部テキサス州の田舎町では、銃の携帯許可を得るための講習会に、大勢の学校教師らが詰めかけていた。教師の多くは、銃を持つのは初めてだという。子供を守るためには、自ら銃を持たねばと考える教師も増えているのだ。また、銃の展示即売会でも異変が起きていた。アメリカでは珍しくない銃の展示即売会だが、1月はその会場にかつてない数の人々が訪れていた。若い夫婦や年配の人、親に連れられた小さな子供の姿もあった。まるで家電製品を買うかのように、次々と銃が売れていく。会場を訪れていた女性はこう語る。

 「銃を買うのは初めてなんです。公共の場での発砲など、気の狂ったような犯罪に備え、私自身を守る方法を学ぼうと決めたんです」

 展示即売会には、より殺傷能力の高い銃も並べられていた。今、オバマ大統領が、規制の対象にしようとしているのが、こうした殺傷能力の高い銃だ。ところが、規制される前に買っておこうという人も大勢いる。ある男性は、2人の息子を連れ、半自動小銃を購入した。「政府が禁止しようとしているからその前に買いました」と語る男性の自宅を訪ねた。

 男性の名前はラッシュさん。航空会社のパイロットで、10歳と8歳の子供がいる。小さな子供がいる家で銃が保管されていた場所は、寝室から通じたクローゼット。洋服をかき分けた奥にあるキャビネットの中だ。ピストルとその弾丸もあった。この日、ラッシュさんは、10歳の長男・デービット君に初めての銃をプレゼントした。「デービット。おまえももう男だ。武器を手にしなさい」「かっこいいだろ」という父親の言葉に、うなずきながら銃に触れる息子。わずか10歳で自分の銃を持つこの光景は、アメリカでは特別なことではない。「銃を持ててとても興奮しています。狩猟に行く友達と銃について話すのが楽しいです」と語るデービット君。アメリカでは、多くの人が銃を持つことは憲法で守られた当然の権利だと考えているのだ。

 2期目を走り始めたオバマ大統領にとって、銃の規制は重要課題。銃とともに歩んできた社会を変える一歩は踏み出せるのだろうか。