“熟年離婚”過去最高に──「モラハラ我慢しなくても」「介護想像できない」 コロナも影響? もめ事の中身【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「“熟年離婚”の割合 過去最高?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●コロナの影響で“熟年離婚”増加?
●“熟年離婚”注意すべき事は
猪子華・日本テレビ社会部記者
「日本では計算上、3組に1組が離婚していることになるんですが、今、いわゆる熟年離婚の割合が増えているといいます」
「厚生労働省の人口動態調査による離婚件数の推移を見ると、2002年に約29万件あったのをピークに減少傾向にあります。確定値の最新である2022年は17万9099件と、4割ほど減っています」
「2022年の件数を同居期間別、つまり夫婦が一緒に暮らした年数別に分けると、同居期間5年未満での離婚が5万2606件で最も多いのですが、注目は20年以上連れ添った夫婦の離婚です。一般的に熟年離婚と呼ばれるもので、3万8991件ありました」
「この熟年離婚の件数は1998年以降、1年間に4万組前後と高止まりしています」
猪子記者
「熟年離婚の割合の推移を見てみると、同居期間が分かっていないケースを除くと、2008年以降増え続けています。2022年は全体の約23.5%で、統計を取り始めた1947年以降で過去最高値となりました」
森圭介アナウンサー
「少子化などの影響で結婚の数が減っていますから、離婚の数が減っていくのは分かります。熟年離婚の数が減らずに離婚の数が減っているから、相対的に熟年離婚の割合が増えているという計算なんですね」
「新型コロナウイルスの影響があるということですが、そもそもの背景について、離婚問題に詳しいフェリーチェ法律事務所の後藤千絵弁護士に聞きました。熟年離婚の相談件数は増えていて、子育てが落ち着いた女性からの相談が増えているということです」
「その大きな背景の1つは、女性の社会進出です。40代以降も収入基盤のある女性が増え、離婚後に困窮することがなくなってきたといいます」
「そして、モラハラなどへの認識の高まりもあります。我慢するのが当たり前だと思われていた嫌がらせなどについても、『これはモラハラなんだ』『我慢しなくてもいいんだ』と世の中が気づいてきたことが挙げられるといいます」
「特に大きな背景は高齢化です。仕事をリタイヤしてからの夫婦で暮らす時間が延びたため、将来への希望を感じられない人が増えたそうです」
「中には、『相手の介護が想像できない』という理由もあり、年を取ってくると親だけではなく相手の介護も視野に入ってくるわけなので、そこまでしてあげたくないという気持ちに気づいて、離婚を検討する人もいるのだそうです」
桐谷美玲キャスター
「実際に女性の社会進出はすごく増え、当たり前になってきています。離婚をポジティブに捉えれば、子育てが落ち着いて自由に生きられる1つの選択肢という考え方もあるのかなと思いますね」
猪子記者
「さらに後藤弁護士は、これらの要素だけでなく新たな要因も加わっているといいます。1つが新型コロナです。コロナ禍では外出制限やリモートワークで夫婦が一緒にいる時間が増えました」
「それによって老後の生活をイメージしやすくなり、『このまま老後なのか、嫌だな』というネガティブなイメージが湧いたことで、離婚の検討につながるというケースもあるといいます」
森アナウンサー
「先がちょっと見えた、ということですね」
猪子記者
「さらに、コロナ禍で消毒などの対策や、人との付き合いをどのぐらい制限するのかなど、夫婦間で価値観の違いが浮き彫りになり、溝を生むこともあったということです」
山崎誠アナウンサー
「『おうち時間』で一緒にいる時間が増えたこともあり、楽になった部分もあれば、一方でこれまで気にならなかったことが目についたり、ストレスになったりという部分があった、ということでしょうね」
猪子記者
「また、熟年離婚の相談者の中で増えているというのが、相手の言動が原因で体調不良になっているという人です。相手からかけられる言葉を想像したら家に帰りたくない、汗が出る、胃腸の調子が良くないなど、いろいろあるようです」
「何が原因か分からなかったものの、実際に別居してみたら症状が解消されたという人もいるといいます」
森アナウンサー
「一緒にいることが原因だったということですね?」
猪子記者
「結果としてそういう事だったんじゃないか、ということです。こうした症状を訴える人は男性にも女性にもいるといいます」
猪子記者
「後藤弁護士によると、いざ離婚するとなった時、トラブルになるケースもあるといいます。離婚で起きるもめ事としては、親権や養育費など子どもに関するものをイメージする方も多いと思いますが、熟年離婚では既に子どもが成長して独立している家庭も多いです」
「多いのが、一緒に住んでいる家の取り合いです。離婚してからローンを組んで新たに家を買うのは、なかなか難しいですよね。また退職金の分割などでも、もめることがあるということです」
刈川くるみキャスター
「こういう問題は出てきますよね。ただ離婚する、しないどちらにしても、選択肢があるというのは気持ちの余裕にもつながるのでいいと思います。ただ次のステップに行く時、トラブルは避けたいですよね」
猪子記者
「熟年離婚で注意すべき事には、何があるのでしょうか? 後藤弁護士は、まず経済的な問題のシミュレーションをするのが大事だとしています。例えば、年金の分割制度があります」
「以前は、サラリーマンの夫と専業主婦の妻などの夫婦の場合、離婚した後、妻が定額の基礎年金しか受け取る事ができませんでした」
「しかし、2004年の制度改正でできた『離婚時年金分割制度』では、夫が納めた分でもらえる厚生年金を、離婚後に夫婦で分割して受け取る事ができるようになりました」
「また、大事なのが子どもの援助を受けられるかどうか。離婚した後、自分の味方になってくれず相手の味方になる可能性もあります。離婚すると老後に孤独を感じるかもしれないという事もイメージして、本当に離婚していいのか考えるのも大切だといいます」
森アナウンサー
「もちろん経済的な話もそうですが、これまで家の事、家族の事、家庭の事というのはあまり外に出さないものだよねという、なんとなくの不文律があったと思います」
「それが、モラハラもそうですが表に出やすくなり、『自分だけが我慢しているのは違うんじゃないか』と思う方が増えてきたというのもあるかもしれません。離婚を勧めるというわけではありませんが、ポジティブな選択肢として捉える分にはいいかもしれませんね」
桐谷キャスター
「それも1つの選択ですよね」
森アナウンサー
「あとは、時間がある方は、そうならないように今から関係を良くしておく…。自戒の念を込めて、そう思います」
猪子記者
「後藤弁護士は、離婚せずともお互い干渉せずに暮らせるように別居をするというのも選択肢の1つだと話していました」
(2024年8月14日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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