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“映画のモデル”ロス市警に密着

2013年8月23日 14:58
“映画のモデル”ロス市警に密着

 約5分に1件の事件が発生すると言われるアメリカ・ロサンゼルス。映画のモデルにもなった警察署で市民を守る警察官に、ロサンゼルス支局・加藤高太郎記者が密着した。

 先日、公開された映画“エンド・オブ・ウォッチ”は、ロサンゼルスの犯罪多発地区をパトロールする警察官たちの日常ときずなをドキュメント風に描いている。舞台はロサンゼルス南部のサウスセントラル地区だ。約20年前、白人警察官による黒人殴打事件をきっかけに、人種差別などに抗議する活動が大規模な暴動に発展した場所としても知られている。今もギャング同士の抗争が繰り返され、街には銃撃の跡も見られる。

 今回、映画のモデルとなった“ロサンゼルス市警・ニュートン警察署”の取材が許可された。朝礼では、最近、事件が発生した場所を地図で確認しながら、警察官がパトロールの配置などについて指示を受けていた。パトロールでは、コンビを組む同僚との信頼関係が、何よりも重要だという。ある警察官は「身を守るためには相棒が頼りです。何かが起きた場合、お互いがどう動くのか、話さなくても分かっているつもりです」と語る。

 パトロールには装備も重要だ。警察官が銃を手にして「45口径の自動式拳銃です。照明も付いています」と説明してくれた。この他にも、スタンガンや催涙スプレーなどを携帯している。凶悪化する犯罪に対処するため、ショットガンなどの強力な銃も欠かせない。この日のパトロールでは、最近、麻薬がらみの事件が多発しているという倉庫街を重点的に回った。通りの壁に“フロレンシア”と書かれている。これはギャングの名前で、縄張りを示しているという。車のハンドルを握る警察官は「人々の行動をチェックしています。ギャングの一員に見えたり、信号無視などをしていれば呼び止めて捜査します」と教えてくれた。

 映画にも登場する凶悪なギャング。近年、メキシコの麻薬組織が勢力を広げ、警察官が狙われるケースも増えているという。常に危険と隣り合わせの警察官。その訓練施設を特別に見せてもらった。教官が、映像を見ながらのシミュレーションを行っている。

 「手を見せなさい。聞いていますか?相棒、銃を持っているぞ!手を上げろ!」

 シミュレーションの最後では、銃を持った相手に発砲していた。指示に従わない場合には、瞬時の判断が求められる。このシミュレーションを体験したところ、押し入ろうとする人に「止まれ!」と指示するも、銃で撃たれてしまった。相手が銃を取り出すと同時にこちらが撃たなければならなかったようだ。

 警察署の廊下には、殉職した警察官の写真と同僚からの寄せ書きがあった。この署では、この10年間で3人が亡くなっている。なぜ、この危険な街で警察官になろうと思ったのだろうか?ある警察官がこう答えた。

 「悪い人間を捕まえたい。この街ではそれが実現できます」

 ロサンゼルス市民を守るという使命を胸に、警察官たちはきょうもパトロールに向かう。