米から世界に発信!中国テレビ局の狙いは?
アメリカとの関係を重視する中国。特にここ数年、アメリカでの情報発信に力を入れている。その狙いとは。田口舞記者が取材した。
アメリカの首都ワシントン。ホワイトハウスから歩いて10分ほどの距離にあるビルにCCTVのアメリカ放送局がある。中国の国営テレビ局“中国中央テレビ”、通称CCTV。そのアメリカ支局は、いまから約2年半前に立ち上げられた。私たちは今回、特別にその内部を取材することを許された。フロアを案内してくれたのはCCTVアメリカのジェシカ・ストーン記者。報道局は明るく、かなりの広さがある。ここで働く職員は約160人。職員のうち中国人はわずか10人で、ほとんどがアメリカやイギリス、インドやイランなど、多国籍の職員だ。ストーン記者が同僚の男性を紹介してくれた。
「彼はネイサン記者。外交問題の担当で、フランス人とイギリス人のハーフです」
ネイサン記者はこの仕事についてこう語る。
「中国や世界のニュースを扱うのはとてもエキサイティングです。米中関係は21世紀を形作る関係となるでしょうから、そこに関わることができるのはとても良いことです」
また、多くの職員が、大手のテレビ局に勤めていた経験があるという。ストーン記者によると「ここにはカメラマンも編集者もいます。多くがアメリカの主要ネットワークや地元テレビ局からCCTVに来た人たちです」とのことだ。
ここでは、アメリカ国内や全世界に向けて、英語でニュース番組を製作、放送している。ストーン記者がスタジオを案内してくれた。
「ここがスタジオAで、ほとんどの番組はここで収録します」
看板番組“HEAT”は有識者などゲストを交えたトーク番組。アメリカや中国についてだけでなく、イラクやウクライナなど幅広いテーマを扱っている。ストーン記者はこう説明する。
「中国人だけをターゲットにしていません。世界中の視聴者向けです。アジア人・中国人の見解を含めて国際問題を放送しています」
単に、中国の見解を伝えるだけではなく、あえて中国カラーを薄め、世界情勢も報道することで“国際報道にも積極的な中国”という洗練されたイメージを浸透させる狙いがあるものとみられる。
今回、フロアを案内してくれたジェシカ・ストーン記者は、ホワイトハウスを担当している。彼女の取材に同行したこの日は、カーニー前報道官に「ロシアへの次の追加制裁でアメリカはどのくらい効果が得られると考えていますか」と、ウクライナ情勢について質問していた。ストーン記者は「私はホワイトハウス外国人記者協会の副部長なので、できるだけ毎日来て模範となるようにしています」と語る。
ストーン記者は、アメリカの4大ネットワーク・フォックステレビで勤務したのち、CCTVの契約社員になった。胡錦濤前国家主席がホワイトハウスを訪問した際の取材が北京の上層部の目にとまり、正式に採用されたのだという。中国のテレビ局で働くことに抵抗はなかったのだろうか?ストーン記者はこう語る。
「主に中国的な視点を世界に提供する企業だということは認識しています。しかし、それが中国人の見解をより重視するということではありません。アメリカではよくそういう報道のされ方をしますが、中国は敵ではありません」
テレビだけではない。中国政府系の新聞社もアメリカの有力紙・ワシントンポストと提携し、定期的に紙面を織り込んでいる。なかには、今年3月のミシェル・オバマ大統領夫人の中国訪問を特集した“親しみやすい中国”を印象づける記事もあった。
多額の予算をかけて、アメリカで積極的な情報発信を続ける中国。イメージアップを狙うその動きを今後も強めていくものとみられる。