米中間選挙 韓国系住民の票がカギに?
11月4日に行われるアメリカの中間選挙。今年、学校の教科書に“日本海”に加え、韓国が主張する“東海”を併記することを決めたバージニア州では、韓国系住民の票の行方が一つの鍵となっているようだ。
首都ワシントンから車で約30分の距離にあるバージニア州フェアファックス郡では、中間選挙の候補者が集まり、それぞれの政策を訴えかけていた。取材したこの日、会場には、ベトナム系や韓国系住民向けに放送を行う地元メディアが集まった。中でも、各候補が熱い視線を送るのが韓国系住民だ。民主党のコノリー下院議員も、壇上で「アニョハセヨ(こんにちは)」と、韓国語で挨拶するほどだ。バージニア州の全人口のうち0.9%をしめる韓国系住民。結束力が固く、“組織票”が期待できるため、各候補にとって、無視できない“票田”となっている。
多くの国際機関が使用している“日本海”の呼称。バージニア州では、韓国系住民の強い要望をうけ、州内の学校で使われる教科書に“東海”という名称も併記することを義務付ける法律が成立した。この動きは、中間選挙にも影響を及ぼしている。激戦が予想されているバージニア州第10区では、下院議員の座をかけて、共和党のバーバラ・コムストック候補と民主党のジョン・ファウスト候補が事実上の一騎打ちを繰り広げている。
「これは素晴らしい、素晴らしい勝利です」
こう語ったのは、共和党・コムストック候補。今年3月、“日本海”と“東海”を併記する法案が可決された際、韓国系住民を前に、高らかに勝利宣言をした。記者の「もし当選したらこの法案を連邦議会でも進める?」との問いにコムストック候補はこう答える。
「もちろん。私は国がこの法案について考え、バージニア州がしたことを他の州もできるように法律を制定したいと思っている。解決策はあるでしょう。私たちは教科書に2つの名前が載るように取り組んできた。なので、答えはイエスよ」
この法律を“公約”として掲げる考えをはっきりと示した。
一方、民主党・ファウスト候補はこう語る。
「韓国にとって、名前を加えることが現実的で合理的なことだと思う」
そして、「もし当選したら、連邦議会でも法案を進めていくことを誓約する?」との問いには…
「誓約することは好きではない。有権者に合わせているように思うからだ」
選挙の“公約”にするとまでは明言しなかったものの、呼称を併記すること自体は支持する考えを示した。
多くの韓国系住民が、こうした動きを歓迎している。韓国系住民からはこんな声を聞くことができた。
「『日本海』は分かりにくいし、客観的な名前ではないと思う。両方の名前を併記するのが良いと思う」
「法案成立では私たちをよく支援してくれた。こういう政治家を支持していきたい」
一方で、再選が有力視されている民主党の上院議員からは、疑問の声があがった。
「この問題は国務省が扱うべきもので、個々の議員がこうした呼称について口をはさむべきではない」
また、アメリカの有力紙ワシントンポストも、「外交の専門知識がない2人が、アメリカの同盟国である日本と韓国の問題に首をつっこむべきではない」などと、苦言を呈している。
“日本海”の呼称について、日本政府は、アメリカ政府や議会関係者に日本の立場を伝える努力を続けており、アメリカ政府も、“日本海”が唯一の呼称であるとの一貫した立場を示している。ただ、韓国系住民と強く結びつく候補は、バージニア州だけでなく、カリフォルニア州などでも存在している。今回の選挙でこうした候補が当選すれば、これまで州レベルにとどまっていた韓国系住民の影響力が、今後、国政レベルでも広がっていく可能性も否めず、投票の行方が注目されている。