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【全文】ウクライナ政権キーマンに単独インタビュー プリゴジンの反乱は「ロシア国家の弱さを示した」

2023年7月4日 4:32
【全文】ウクライナ政権キーマンに単独インタビュー プリゴジンの反乱は「ロシア国家の弱さを示した」
ポドリャク大統領府顧問と鈴木あづさ支局長(NNNキーウ)

間もなくクライナ侵攻から500日。反転攻勢、プリコジン氏の反乱など緊迫した場面が続く中、ゼレンスキー大統領の最側近、ポドリャク大統領府顧問がNNNの単独インタビューに応じました。プリゴジン氏の反乱の影響をどうみているか? キーマンが語った内容を全文で掲載します。(前・編の前編)

<ポドリャク氏 プロフィール>

ウクライナ大統領府顧問。侵攻直後にゼレンスキー大統領が国民に向けて発信した「自撮り動画」では大統領のすぐ隣に映っていた、政権を支える「最側近」。戦況や民間人の被害などについてもSNSを駆使し、内外へ発信を続けている。

■「プリゴジンの乱」で明らかになったこと

――プリゴジン氏の乱について。ロシア国内でほとんど抵抗がなかったのは、戦力のほとんどが戦争に使われていて、ロシア軍も厳しい状況にあるということか?

とてもいい質問です。その質問は現代のロシア国のあり方について示しています。「ロシアは、欧米諸国や民主主義国で長らく思われたほど強くないことは明らか」です。それが第1です。

第2に、「ロシアには国内権力の垂直構造が無いのは間違いない」です。我々もそれについて、もう何回かお話ししています。

第3は、「プリゴジンの反乱は、たとえ失敗した乱であっても、プリゴジン1人だけで考えられたものではない」ことです。たくさんの人が、あの企てに直接に関わりました。ロシア連邦の権力構造に関係する人々なのです。

第4の非常に重要な結論は、「プーチンは今のロシアの特定の出来事をコントロールしている人物ではない」ということです。国内の政治の世界、ロシアのエリートたち、ロシア社会にとっては、 ロシアがかなり弱い国家であることが明らかであり、ロシアで何かの動きや不安が発生した場合、(国家が)状況をコントロールすることはきっとできないでしょう。それができる人はいないのです。

プリゴジンがモスクワに進軍したからといって、ロシアで革命がすぐに始まるわけではないことは我々も承知していますが、ロシアが戦場で大きな損失を被ったとき、ロシアが前線で戦術的に大きく敗北したとき、ロシアで“不可逆的な出来事”が必ず始まるでしょう。

プリゴジンの反乱は、ロシア国家の弱さを示したのです。「ロシアの利益を何とか考えるべき」などと提案する人は、この事情を理解することが重要です。この戦争で「妥協点を探るべきだ」などと言うとき、その人はロシアが今、非常に…非常に弱い国家であることを念頭に置くべきなのです。とても危険です、なぜなら、ロシア政府は国内状況をコントロールしていないからです。

――ワグネルは今後、ベラルーシを拠点にすると言われている。ゼレンスキー大統領も「ウクライナ北部の守りを固める」と言っていたが、ワグネルはいまだに脅威だと考えるか?

この状況を2つの部分に分けて考えましょう。まず第1は、ワグネルはすでに存在しないのです。確かに彼らはまだ、いくつかの任務をしています。どうしてでしょう。その理由は、ワグネルが民間の軍事会社ではなく、膨大な予算…つまり年間10億ドル以上の国家資金を持つ国営の軍事会社であり、ロシア国防省などの関連国家機関と契約を結んでおり、そして最も重要なのは、ロシア国家という依頼主があったからです。

ですから、これからワグネルは分割されていきます。ワグネルの一部はロシア国防省との契約にとどまり、もう一部は国内をコントロールするためにロシア国家親衛隊との契約に移行します。また、ワグネルの一部は、ロシア連邦から委託された任務を行ったアフリカ大陸に戻ろうとするでしょうし、ごく一部はベラルーシに残り、指導員として(ベラルーシの)ルカシェンコ(大統領)のために仕事をするでしょう。

プリゴジンはもちろん、ウクライナとの戦争での状況に対して過去半年間、持っていたような大きな影響力を持つことはもはやないでしょう。

その一方で、ルカシェンコはここ数か月、あるいはここ数週間、“ベラルーシではある(特定の)プロセスが進行している”という発言を数多くしています。

1つめ、彼らは戦術核兵器を提供してもらったのです。2つめは、彼らは特定の、言ってみれば動員活動を行っています。3つめは、彼らは確かに、ワグネルの司令部の一部がベラルーシに身を置く機会を提供しています。

これらすべてを把握した上で、ルカシェンコは残念ながら今、現実世界を正しく認識しておらず、不適切な政治家であると、我々は理解しています。

そのため、挑発行為を防ぎ、ベラルーシで何が起きているかを我々が理解するために、ゼレンスキー大統領はベラルーシで起きている出来事の分析を含め、情報機関が集中する必要があると述べています。つまり、ベラルーシの戦術核兵器やその他の装備の再利用プロセスや、マルジナホルカ、オシポヴィチでのベラルーシ特殊部隊の訓練などに関して、ワグネル戦闘員がどのような役割を果たすのかなどについてです。

我々はこうしたことを監視しています。ルカシェンコが現在、さまざまな活動を示していることを入念に調べています。それと同時に、“プーチンがすでに自分たちにとって重要な人物ではない”と理解したロシア連邦のエリート層で何が起きているのか、監視しています。

――ルカシェンコ大統領は、もしプリゴジン氏がモスクワに行けば「虫けらのようにつぶされる」と発言している。ポドリャク顧問も、プーチン氏を無力化したようなものだと発信しているが、ワグネルの反乱を許したことはプーチン大統領にとって、大きな打撃になったのか?

ロシアの人々は法律や合意ではなく、武力に従うことに慣れています。ロシアと合意することが不可能なのは、なぜでしょう。その理由は、ロシアが決して合意を履行しないからです。これがロシア連邦のあり方です。ロシア国民は合法性ではなく、武力を期待しています。このことを理解しなければならないのです。

ですから、特に、ワグネルやプリゴジンがロシア連邦の領土から去ることを許したことによって、プーチンはロシア国内での威信を確実に失ったのです。

ルカシェンコ大統領が語っていることに戻りましょう。交渉したのはルカシェンコではなく、他の人たちです。ルカシェンコはロシアで起きていたことを理解していないのです。もちろんロシアでは、もしワグネルたちがモスクワに着いたら、特定の国家機関の管理下に置き、支配下に置いたのでしょう。

ロシアには今、権力の垂直構造がないのです。ロシア国家親衛隊や警察は反乱を防ぐ準備ができていなかったし、政治エリートは飛行機に乗ってモスクワやロシア自体から飛び去ったのです。ですから、もちろんワグネルは(成功する)チャンスがありました。

別の話ですが、ルカシェンコはワグネルをとても恐れています。なぜなら、ワグネルが(ベラルーシの首都の)ミンスクを占領するのは、モスクワを占領するよりも簡単だからです。ベラルーシには軍事的な経験を持ち、ワグネル民間軍事会社と直接対決できるような効果的な部隊はないからです。ルカシェンコが恐れているのは明らかです。

だからルカシェンコはワグネルに“ベラルーシのトランジット形式滞在”を提供しました。しかし、(ルカシェンコ氏が)コントロールできないワグネルの軍事基地を設置しないことは確実です。ルカシェンコがコントロールできないから恐れるのです。

その上、ベラルーシは補助金を受けている国家であり、ワグネルのサービスの依頼先にはなり得ないことを忘れないでほしいです。したがって、ワグネルは一時的にベラルーシに留まり、その後、金もうけを続けられる場所を探すでしょう。

■プーチン大統領は権力の座にとどまり続けるのか

――来年のロシア大統領選で(プーチン大統領は)変わると見ているか?

2024年に大統領選挙が行われると思いますか? 私には疑問です。プーチンは確実に、すでに大きな影響力を持っていないように思います。

ちなみにもう1点なんですが、ワグネルがロストフナドヌーからモスクワに向かっていたとき、民間人の中で誰もプーチンを守ろうとしなかった。それどころか彼らは、ワグネルたちを歓迎しました。反乱軍を歓迎したのです。彼らは「そう、支配階層を変える必要がある」と述べ、誰もプーチンを守りたがらなかったのです。つまり、(大統領選になっても)誰もプーチンを支持しないのです。

第2の要素はすでに申し上げたように、プーチンが弱い人間であるため、自分の評判をゼロにしてしまったのです。

第3の要素は、ロシアの政治エリートたちはプーチンについて、以下のことを理解しています。
(1)戦争のことを分かってない
(2)政治的意志がない
(3)影響力のある人物ではない、すでに世界では完全に弱い人物とみなされている

もちろん、今日の政治的エリートたちは他に支援するべき人物を探すでしょうし、そこで大統領選挙に移ります。

ウクライナは戦争に勝利し――つまり、ロシアに戦術的な敗北をもたらし、その後、前線で不可逆的なプロセスが始まり、その不可逆的なプロセスによってロシアが撤退する――つまりロシア軍はロシア連邦の国境までに撤退するという事実につながります。

その後、ロシアのさまざまな地域で抗議行動、暴力行為、紛争などが始まります。別の種類の選挙が行われるでしょう。恒久的な大統領選挙ではなく、暫定的な大統領選挙また議会選挙になります。それが政治エリートの変貌になります。その活動には、プーチンの姿は、もうきっとないでしょう。

■今の戦況は?

――ロシアが“弱体化”し、ウクライナには今後、西側から兵器が供給される。かなり戦況は有利になってきていると見てよいか?

おっしゃるように、ウクライナを支援するすべての国の軍産複合体の生産が徐々に増加し、ウクライナでの生産が増加しています。備蓄が続き、ウクライナ軍のソ連軍基準からNATO軍基準への完全な転換は進んでいます。武器の蓄積は確実に続いています。

確かに特定のものが不足しています。重口径の投射砲、長距離ミサイル、最新の戦術機…つまり最新世代の戦闘機が今はないです。我々はこれらすべてを手に入れます。ただ、時間が必要です。

一方、ロシアでは生産力が低下しています。生産できる量はますます少なくなっていて、ロシアはたくさんの旧ソ連製の兵器が今、ウクライナの最前線に送られています。ですから、まだ一定の兵器が残っています。

第2の要素は、北朝鮮やイランのような国々があり、何らかの形でロシアが武器などを得るのを助けているということです。 もちろん、これは一定の結果をもたらしますが、数学的な観点からは、ウクライナの兵器量は徐々に増加し、ロシアの兵器量は減少していくでしょう。

それにはある程度、時間がかかります。なぜなら、戦争のこの段階では、ウクライナがF16やATACMS、TAURUS、すなわち距離250キロ、300キロ、350キロのミサイルという追加の道具を手に入れることが重要だったからです。(手に入れれば重要だったのに)どうしてでしょう。戦争のこの段階では、ロシアの追加予備力を破壊し、ロシアの防衛組織に供給する物流を破壊することが極めて重要だからです。そうすれば、防衛組織を破壊することが容易になるからです。

――大規模な反転攻勢が行われているが、ロシア軍の抵抗はかなり激しいようだ。今、どのような状況か?

これは大きな戦争です。前線の長さは1800キロに及びます。これは第二次世界大戦以来最大の前線であり、朝鮮半島で南北戦争があった時でさえ、前線はもっと短かったです。

第2の要素は、ロシア側が関与する多くの資源です。占領地にいる動員兵力は30万~35万と、30万人を超えています。

ロシアにとっての第3の要素は、これは根本的な戦争であることです。これは、ロシアが今の形を存在し続けるかどうか、つまり外交政策などの今の概念を維持するかどうかの賭けであり、ロシアはこれを理解しています。つまり、勝つか負けるかのどちらかであり、妥協はないのです。ですからロシアは防衛構造、軍事強化、コンクリート(による防衛壁)に、たくさんの投資をしてきたのです。

ちなみに、地雷のある地帯は2万平方キロメートルに及びます。それをすべて破壊する必要があり、我々はそれを行います。

ウクライナ参謀本部によるシナリオがあります。全方位において、これらは反転攻勢ではなく「第1段階の攻撃作戦」と言い、それが戦場を形成するものです。

もちろん航空機については、いつも申し上げていますが足りていません。NATOの現代戦略の枠内で制空権を握ることが重要であるため、それが大事なのですが、足りていません。

しかし、それでもウクライナは日々、前進しています。私たちは第1防衛線に1キロ、2キロ…としがみついて、徐々に前進しています。 第1(防衛線)を突破し、第2を突破する以外、方法はありません。必ずそうしますし、私は楽観的です。

ただ、この戦争の範囲、関係する資源の量、そしてロシアが“テロや恐喝的な外交手段を用いる国”という概念として完全に姿を消すか――ロシアが支配的になり、国際政治の場で北朝鮮のような国が支配的になるというこの戦争の主な利害関係を理解するとき、その(戦いの)代償を理解し、それがいかに難しいかが分かります。ですが、我々は前進しています。

(中編へ続く)