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【全文】ウクライナ政権キーマン 単独インタビュー「日本は、この戦争がどういうものかを明確に意識している」

2023年7月4日 4:34
【全文】ウクライナ政権キーマン 単独インタビュー「日本は、この戦争がどういうものかを明確に意識している」
ポドリャク大統領府顧問と鈴木あづさ支局長(NNNキーウ)

間もなくウクライナ侵攻から500日。反転攻勢、プリゴジン氏の反乱など緊迫した場面が続く中、ゼレンスキー大統領の最側近、ポドリャク大統領府顧問がNNNの単独インタビューに応じました。今、国際社会や日本に望むことは? キーマンが語った内容を全文で掲載します。(・後編の後編)

<ポドリャク氏 プロフィール>

ウクライナ大統領府顧問。侵攻直後にゼレンスキー大統領が国民向けて発信した「自撮り動画」では大統領のすぐ隣に映っていた、政権を支える「最側近」。戦況や民間人の被害などについてもSNSを駆使し、内外へ発信を続けている。

■ロシアを恐れるのを止めるべき

――(戦争は)いつ終わるか?

なるべく早くですが、実際の終わりは歴史が求めている終わり方のほかになりません。それを促すのは別の話で、数学的な計算の話です。日本人は数学が好きだと知っています。計算とはかなり簡単なことです。

ロシアはタンクを2万台持っているとすると、ウクライナは我が国の兵士たちの準備のレベルを考慮して、10台ではなく、少なくとも1000台がなければならない。ロシアは飛行機を500台持っているとすると、我々は100台を持つべきだが、対等のものでなければならない、現代のチャレンジに対応できるものでなければならない。

計算を分かっていれば、我々の構えていること、ウクライナのモラルな状態を分かっていれば早く終わらせることができる。問題はすでにウクライナではなく、他の国々が言い訳を探したりするのを止めることです。皆さんが武器を十分に提供しないのはどうしてだろう?  ロシアがカホフカダムを爆発させたことに反応しないのはどうしてだろう?  ロシアがザポリージャ原子力発電所に地雷を敷設したことに反応しないのはどうしでだろう?…などです。

なぜなら、ロシアを恐れるのを止めるべきだからです。ロシアを恐れなくなった瞬間に、次の3つのステップが行われます。

1つめは、ウクライナにどんな武器をいつ渡すのかが初めて見直される。そうすると余計な手続きがなくなります。

2つめはロシアの戦法が見直されます。

3つ目の要素は、集めて座ってなんとか話し合って、戦争を我々の子供たちに引き継がれるようにしましょう…ということもなくなることです。すべてを早く終わらせることができるが、そのために数学的に計算されている適切なツールが必要です。

世界は、民主主義の世界は、自分の力を信じてほしい。言葉ではなく、力を。ウクライナは民主主義のために適切な代償を払わなければならないことを示しています。

■高まる“核の脅威”は…

――今、ザポリージャ原発やベラルーシの戦術核など、核の脅威が高まっている。日本は唯一の被爆国でもあり、福島第一原発の事故も体験し、核の怖さを知っている。どのように見ている?

もちろん、ウクライナは核の脅威を懸念しています。我々は多くの国と違って、ロシアとはどういうものなのか分かっています。ロシアがある所に地雷を敷設したら、それを爆発させることができることを我々は意識しています。ロシアが地雷を除去をすることは絶対にないのです。

ロシア側はカホフカダムに地雷を敷設し、爆発させました。ロシアはクリミア・ティタン工場に地雷を敷設しており、それはクリミア半島の北部になります。ロシア側は戦争に負けそうになったら、この工場を爆発させるでしょう。

ロシア側はザポリージャ原子力発電所に地雷を敷設していますが、それを発表したことは、我々が行った最も大切なことです。我々は公にその話をしています。我々は世界のコミュニティーからの適切な反応を求めています。

我々は根本的な犯罪への試みを明確に記録しています。ロシアには手段があり、動機があり、ロシアが当該地域を管轄していると我々は示しています。そして、起こりうる相当な結果の話もしています。世界をそのことに対し、また目をつぶらないでほしいのです。

IAEA=国際原子力機関がもっと積極的に管理してほしいし、(事務局長の)グロッシ氏は「あそこに特に何もない」と言わないでほしい。(ロシア国営原子力企業)ロスアトムのことを話してほしいし、「あそこに見かけたら、ロスアトムはすべての市場を失ってしまう」と言ってほしい。このような反応があってほしいのです。

国連ではロシアの依頼に応じた架空の会議を止め、“ロシアが軍をザポリージャ原子力発電所に配置しているのはどうしてなのか”といった会議を開いてほしいのです。“機械室や冷却組織に地雷を敷設しているのはどうしてか”など、それらの問題が常に国際会議の協議事項にあってほしいのです。

この戦争で、我々は最後まで行きます。ゼレンスキー大統領は、ロシアがしていることにかかわらず「この衝突を冷凍状態にさせない」と、かなり明確に言いました。何らかの妥協の境界線を、固定化させるつもりはありません。そんなことはしません。くり返しになりますが、戦争を次の世代に引き継がれることは絶対に許さないからです。

ロシアは負けるべきですし、ロシアは変革すべきです。その一部は犯罪者として被告席へ行くべきで、ロシアは懺悔すべきです。そうすると、世界はより安定した場所になります。これこそが、我々が今、戦っている目的なのです。

■日本へのメッセージ

――今年の年末には、林外相が提案したウクライナ復興に関する会議が日本で開催される。日本に今、期待することは?

日本に対して、とても温かい気持ちを抱いています。日本は我々にとって、さまざまな面で多くの協力をしてくれています。地雷除去にしても、人道的なイニシアチブにしても、国家がそれでも存在し続けるために必要な多くの機会も、情報面にも、外交的な圧力にも、金銭的な支援もです。

日本は、この戦争とはどういうものなのかを明確に意識していると私は思います。それは我々にとって、とても大事です。日本は、ウクライナに何らかの妥協を提案しないことは明確で、それは我々にとって絶対的に大事なことです。日本は戦争の正しい終結、戦争の不公正な終結へのロビイストです。それはすごいことなのです。

日本は国家レベルでも、社会のレベルでも常にウクライナを支援し続けていると感じています。加えて、もっと仲裁役を担ってほしい。そして、“この戦争の価値はどのようなものなのかと意識したくない国々”への圧力がもっとあれば、より良いと思います。

そして、この戦争が正しくない終結にたどり着いたらどんなことになるのか(を、もっと説明してほしい)。日本がそれを、いつもの日本のやり方で、より多く、より早く、より大きな規模でやっていただきたいです。それだけで十分です。それ以外のことは、すでにしていただいています。

この戦争が終わったら、ウクライナは“他の独立国を支配していた、嫌悪に基づいた膨大な新時代の帝国、独占の国との戦いに耐えた”ことについて、きっとたくさんのお話ができると思います。我々の日本の友人のことも、歴史に刻まれるでしょう。

今、それぞれの国は、人間の歴史にどのような国として残りたいかを選択している時代です。ウクライナへの支援は人道的な要素の記録です。皆さまと一緒に、ルールのある世界、人権への絶対尊重の世界、競争の自由への尊重の世界を求めています。日本は我々をどんな面にも支援してくださっていて、それは大変うれしいことです。