支援のあり方学びに…イラク代表団被災地へ
過激派組織「イスラム国」との戦闘が続くイラク。多くの住民が避難生活を強いられ、支援のあり方が課題となっている。その手本を日本に学ぼうと、イラクの代表団が今週、東日本大震災から4年を迎えた被災地を訪れた。
あの日、最後まで住民に避難を呼びかけた宮城・南三陸町の防災対策庁舎。12日、この地をイラクの代表団が訪れた。
通訳「ここでは2人があの柱に登って生き残ったそうです」
そう言って通訳が指さしたのは、庁舎の屋上。
参加者「あのアンテナに?」
「はい。そして8人が階段にへばりついて助かりました」
一体なぜ、イラクの人々が被災地を訪れたのか。
「イスラム国」との戦闘が続くイラク。現在、250万人の避難民がいるといわれ、その3分の1近くが北部のクルド人自治区で水も食料も不十分な生活を余儀なくされている。避難民の受け入れを担当しているクルド人自治区・ドホーク県人道支援委員会のハバルさんは、被災地での復興を避難民支援に生かしたいと考えている。
ハバルさん「避難民の多くは家も財産も全てをなくしました。まず彼らの命を救うことが最優先です」
代表団が10日に訪れたのは、岩手・遠野市にあるNPO「遠野まごころネット」。被災者の就労支援などを行っている。ハバルさんが打ち明けたのは、苦しい地元の状況だった。
「2013年から財源もない中、この状況が続いていて、(避難民を)受け入れている地域は疲れ果ててしまっています」
避難民には仕事がなく、地域では支えきれないというのだ。そこでNPO(=非営利組織)の理事長が提案したのは、避難民自身が地域の労働力として貢献するという発想だった。
遠野まごころネット多田一彦理事長「(避難民が)道路とか難民キャンプをきれいにするということをひとつの仕事にする。そこに対してお金を払うとか、そういうことを考える」
同じ発想は仮設住宅でも聞かれた。
横山仮設住宅生活支援員・佐々木陽子さん「4、5人家族もあれば、独居の方もありますし」
この仮設住宅では、被災者自らが生活支援員となり、毎日、一軒一軒を訪問している。
ハバルさん「人々の何かを生み出そうとする力が印象深かったです。もっと避難民が自立のために仕事を得られるよう、帰ってやってみます」
自らが復興の原動力となっている被災者たちの姿。戦闘で家を追われたイラクの避難民の支援のあり方に、どう生かされるだろうか。