ロシア編入の「住民投票」ナゼ強行へ?――地元知事の“懸念” 第二次大戦以来の「動員令」…プーチン大統領は「核」も示唆
親ロシア派が実効支配するウクライナ東部と南部の4つの地域で、ロシア編入に向けた住民投票が行われることになりました。このタイミングで踏み切る背景を考えます。一方、プーチン大統領は第二次大戦以来となる動員令を発令し、30万人を招集します。
■プーチン氏「あらゆる手段講じる」
ロシア大統領府が公開した映像で、プーチン大統領は21日、「我々は国家と国民を防衛するため、あらゆる手段を講じる。これはただの脅しではない」と語りました。欧米から核の脅威にさらされていると主張しました。
「核兵器で私たちを脅迫しようとしている人たちは、風が自分たちの方向に吹くかもしれないことを知らなければならない」。攻撃を受けた場合、核兵器を使用することを示唆しました。
■ロシア軍「動員令」で…市民は?
さらにプーチン大統領は、部分的な動員令を発令。軍隊経験のある予備役が対象で、約30万人を招集するということです。ロシアでの動員令は第二次大戦以来です。
ロシア国民はどう受け止めているのか。21日、モスクワ市民に聞きました。
「(動員の)対象は妥当だと思う。訓練をしていない人を軍隊に送るのは意味がない」「これは『特別軍事作戦』で『戦争』ではないはずなのに動員…。何が何だかよく分かりません」といった声が聞かれました。
■ロシア編入へ…4地域で住民投票へ
軍事侵攻からまもなく7か月。ウクライナ軍がハルキウ州の一部を奪還するなど反転攻勢が強まるなか、親ロシア派勢力が実効支配する地域で、ロシア編入の是非が問われるという住民投票が行われることになりました。
対象はウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州、南部のザポリージャ州とヘルソン州の4つの地域です。9月23~27日の5日間実施される予定です。
■地元州知事は「結果は誰も認めない」
ルハンシク州のハイダイ知事に取材しました。
「住民投票の結果は私たちもヨーロッパの人たちも、誰も認めません」とした上で、「住民投票を行った後は、そこはロシアの領土。ウクライナがロシアを攻撃してきたと彼らは言い出すだろう。そのことによって総動員令を出すこともあり得る」と懸念していました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は「私たちの立場は、騒音やどこかの発表で変わることはない」と、突き放すような態度で一蹴しました。
■「早期の住民投票」の背景は?
ロシア側は、なぜこのタイミングで住民投票に踏み切るのでしょうか。ロシア政治に詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子教授に聞きました。
「ロシアはどんどん撤退を余儀なくされる可能性があります。(住民投票の時点で)ロシアが獲得している領域については、そのまま維持できる可能性が高いということを考えて、早期に住民投票を行うという暴挙に出たのではないかと(考えられます)」
住民投票を強行すれば、国際社会の反発は必至です。
(9月21日『news zero』より)