×

“暗殺未遂”から1週間 復活トランプ氏 “神格化” “フェイク”も…分断広がるアメリカの今【バンキシャ!】

2024年7月22日 9:36
“暗殺未遂”から1週間 復活トランプ氏 “神格化” “フェイク”も…分断広がるアメリカの今【バンキシャ!】

銃撃“暗殺未遂”から1週間。事件後は挑発的な発言を控えたトランプ前大統領が、再び大観衆の前に現れ、バイデン大統領を“ペテン師”と呼ぶなど相手を攻撃するスタイルが復活。国内の分断が指摘されるアメリカ社会の今をバンキシャ!が検証しました。【バンキシャ!】

日本時間21日朝、アメリカ・ミシガン州。

増田 理紗 記者/NNNグランドラピッズ
「アリーナが大きく歓声に沸いています。トランプ前大統領、銃撃事件後、初めての集会に臨みます」

“暗殺未遂事件”から1週間。

トランプ前大統領が、事件後初となる選挙集会の会場に姿を現した。これまで右耳を覆っていた白いガーゼは消え、目立たない色のばんそうこうに変わっている。

トランプ前大統領
「私たちは戦う、戦う、戦う、そうだろ?そして勝つ、勝つ、勝つ」

アリーナを埋め尽くした支援者が一斉にわく。その熱は、開場の約2時間前からすでに高まっていた。

増田記者
「まだ開場まで2時間あるんですけれども、すでに最後尾がわからないほど長い列ができています」

列は会場前におさまらず、街へと延びる。その長さは、実に1キロ以上だ。

そこへ、馬に乗った警察官が現れた。自転車に乗ったチームも周辺をパトロール。近くの建物の屋上からは、警察官が目を光らせる。これまでにない“警戒態勢”の中で始まった演説集会。

増田記者
「取り囲んでいる警備の数が通常より多いです」

10人近い警備に囲まれたトランプ氏は、あの事件について話し始めた。

トランプ前大統領
「私はこう話していたんだ…『移民政策の素晴らしい成果を見てくれ』…ヒューン」

「神のご加護によって今あなたたちの前に立つことができている。ここにはいられないはずだった!」

さらに演説は、対立候補・バイデン大統領の話題へ。

トランプ前大統領
「まさにこの瞬間、民主党のボスたちは党の予備選の結果を覆して“ペテン師・バイデン”を候補から外そうと必死になっている。あんなに良いヤツいないのにな」

目立ったのは、バイデン大統領をあざ笑うような言葉だ。

***

事件の5日後(18日)に行われた共和党大会の演説では…

トランプ前大統領
「『半数のアメリカ人』ではなく『全てのアメリカ人』のための大統領を目指す』

“分断”ではなく“団結”を呼びかけ、“口撃”も控えめだったトランプ氏。しかし21日は、バイデン大統領を強い言葉で何度も批判。支持者をあおった。

トランプ前大統領
「史上最悪の大統領である老いぼれバイデンは、過去の記憶として忘れ去られるだろう」

「アメリカを再び偉大な国にしよう!サンキュー、ミシガン!」

銃撃を受けたものの致命傷を免れ、選挙戦を続けるトランプ氏。その姿に“神”を重ね“神格化”する動きが今、支持者の間で広まっている。

トランプ氏が正式に大統領候補に指名された共和党大会。その会場の外でみつけたのは。

NNNミルウォーキー 増田 理紗 記者
「トランプ前大統領が銃撃された直後の写真が印刷されているTシャツが売られています」

プリントされていたのは、“奇跡の一枚”とも言われた、あの写真。

増田記者
「女性がトランプTシャツを手に取っていますね」

書かれていた言葉は、「弾丸ですら我々を止められない」。

トランプ氏の支持者
「共和党大会に参加するのは初めてです。ここに来る前はトランプを支持していませんでした。バイデンよりトランプの方が、大統領にふさわしいと確信しました」

これまでは中立だったが、トランプ氏の支持に回ったという。

さらにこちらの支持者は…

増田記者
「あ、耳にキスをしています」

トランプ氏がケガをした(胸像の)右耳に顔を寄せる。

トランプ氏の支持者
「神が見守っていたと、心の底から信じています」

演説中に銃撃を受けながらも、致命傷を免れたトランプ氏。

トランプ前大統領
「ファイトファイトファイト」

観衆
「ファイトファイトファイト」

一部の支持者から、“神格化”されつつある。

Xに投稿されたのは、イエス・キリストがトランプ氏の肩に手を置く画像。キリストがトランプ氏を守ったなどの主張が、この画像とともにSNSで拡散されていた。

トランプ氏、自身も…

トランプ前大統領
「血がそこら中に流れているのに、私はなぜかとても安全に感じた。神が私に味方してくれたからだ。私はそれを感じていた」

――「神に守られた」と強調した。

事件後の世論調査では、共和党を支持する人の65%が、トランプ氏が一命を取り留めたのは「神の摂理」だと回答しているという。

そして銃撃後、さらに深刻さを増しているのが、アメリカ国内の分断だ。

バンキシャがSNSを調べてみつけたフェイク画像。“バイデン氏”の支持者のものとみられるアカウントから投稿されていたのは…

――「なぜシークレットサービスが笑ってるんだ?やらせだ」

しかし本物の写真を見てみると、シークレットサービスは笑っていない。暗殺未遂が「やらせ」であるかのようにみせかけた、悪質な投稿だ。

対して“トランプ氏の支持者”のものとみられるアカウントには…

――「トランプは胸にも銃撃を受けたが防弾チョッキに助けられた」

しかしこれは、間違った情報。AP通信によると、穴のように見える部分は、シークレットサービスのスーツの折り目だという。胸に銃弾を受けても無事だったという誤った情報を流し、“強いトランプ”を印象づけたかったのか。

こうした両者の支持者らによる応酬について、取材を続けるワシントン支局の山崎支局長は…

NNNワシントン支局 山崎大輔 支局長
「事件後初の演説でトランプ氏は、団結を呼びかけました。しかし演説が長引くにつれ、いつものトランプ氏の主張を繰り返し、トランプ氏はトランプ氏のままでした」

「事件後、共和党からは『バイデン氏の主張が事件につながった』民主党からは『トランプ氏自身が政治的暴力をあおっていた結果だ』と、お互いを非難する声があがっていて、事件を機に分断がさらに広がったといえます」

*7月21日放送『真相報道バンキシャ!』より