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【解説】“金正恩氏の娘”なぜ公開 2つの意図 専門家「国民が“後継者”として見るだろう」

2022年11月21日 19:47
【解説】“金正恩氏の娘”なぜ公開 2つの意図 専門家「国民が“後継者”として見るだろう」

最近、北朝鮮のミサイル発射実験が続いています。18日も発射実験が行われたばかりですが、19日、朝鮮中央テレビは「現場に金正恩(キム・ジョンウン)総書記の娘も同行していた」と、金総書記の娘とされる存在を初めて報じました。

●娘と“手つなぎ視察”
●金正恩氏の子どもたち
●娘が後継者に?

以上、3つのポイントについて、詳しく解説します。

■“新型ICBM”発射実験 北朝鮮が映像公開

19日、朝鮮中央テレビは「18日に新型ICBM(=大陸間弾道ミサイル)「火星17」の発射実験を行った」と伝えました。移動式の発射台からミサイルが打ち上げられる様子をさまざまな角度から撮影し、繰り返し放送していました。「ミサイルは高度6040キロまで上昇し、約69分かけて999キロ飛行し、日本海上の予定した水域に正確に着弾した」と主張しています。

今回の発射実験に立ち会った金正恩総書記は「敵が核攻撃手段を通して、引き続き脅威を加えるなら、 断固として核には核で、正面対決には正面対決で応える」と述べ、アメリカや韓国を強くけん制しました。

■「金総書記は愛する子と夫人と共に出向いた」朝鮮中央テレビ

また、金総書記と手をつないで、ミサイルのそばを歩く少女の姿が公開されました。立てられたミサイルを背に、2人で会話しているような様子も報じられました。ミサイルの打ち上げも金総書記と一緒に見上げていた少女は、一体何者なのでしょうか。

朝鮮中央テレビは「金総書記は愛するお子さまと夫人と共に出向いた」と伝えています。金正恩氏の娘の動静が、公式に報じられるのは初めてです。映像では、娘は白いダウンコートを着て、赤い靴を履き、長い髪を1つに結んでいるいでたちでした。顔立ちは正恩氏と妻の李雪主(リ・ソルジュ)夫人、どちらにも似ているように見受けられました。

韓国の情報機関の分析などによると、金正恩氏と李雪主(リ・ソルジュ)夫人の間には2010年、2013年、2017年に3人の子どもが生まれたのではないかと推定されています。2010年生まれの子どもは、男の子だと推定されています。それぞれ、何月に生まれたかによりますが、現在は12歳、9歳、5歳ぐらいではないかとみられています。北朝鮮では、これまで人数も性別も年齢も公式に明らかにされていません。

ただ、1人だけ、その存在がはっきりと確認された子どもがいます。2013年9月、金正恩氏と交流のある元NBA選手のデニス・ロッドマン氏の会見でそれが明らかにされました。

ロッドマン氏は「金正恩氏は私に心を開き、娘を抱っこさせてくれた。(外国人として)歴史上初めて抱っこしたんだ!」と会見で述べ、北朝鮮を訪問した際、金正恩氏の娘を抱っこしたといいます。当時、英紙の取材に対して、ロッドマン氏は「抱っこした娘の名前はジュエだった」と話しました。

つまり、これまで存在するという明確な証言があるのは、2013年ごろに生まれ、ロッドマン氏に抱っこされたジュエさんだけでした。もし、本当に1人目が男の子だとすると、今回の写真で姿が公開された女の子は「2人目のジュエさんではないか」と推定されています。

■“金正恩氏の娘”公開 2つの意図

北朝鮮政治が専門の慶応義塾大学・礒﨑敦仁教授によると、今回、娘の動静が初めて公開されたことについて、「“2つの意図”があるのではないか」といいます。

一つは、「平和な朝鮮半島を次世代に引き継いでいきたい」というメッセージです。北朝鮮は「ミサイルをはじめとする北朝鮮の強い軍備はアメリカや韓国からの攻撃を防ぎ、北朝鮮における国の安定と平和を守るためのもの」と独特の論理で主張しています。

礒﨑教授は「そのミサイルを背景にして、“次世代の象徴”である自分の娘を一緒に映すことで、『兵器は戦争するためではなく、国を守るため』、『戦争のない世界を子どもたちに引き継ぐ』という意図がある」とみています。

そしてもう一つの意図は、“後継者”です。礒﨑教授は「朝鮮中央テレビや労働新聞で、とにかくあれだけ大々的に彼女を公開したということで、北朝鮮では誰が見ても『この子が後継者なんだろう』と思うであろう」と指摘しました。もちろん明言はしていませんが、まだ彼女が後継者となるかは、現在、全くはっきりしません。

礒﨑教授は「『国民が彼女を後継者として見るだろう』という事まで考えられて、今回、表舞台にお披露目される演出がなされたのではないか」、「今後、ジュエさんがどれぐらいの頻度で北朝鮮メディアに出てくるのか、慎重に見ていく必要がある」としています。

また、礒﨑教授は「北朝鮮はまだ儒教の影響も強く、男性優位な社会も、後継者の決定は金正恩氏の専権事項であって、彼が選んで宣言すれば、女性であっても全く問題ない」、「性別よりも、建国の指導者である金日成(キム・イルソン)氏の血を継いでいる、血脈にあることが重要」と指摘しました。

     ◇

長年、北朝鮮をウォッチしている礒﨑教授も「まさかこのタイミングで、娘を公開の場に出してくるとは大変驚いた」と述べました。将来、どのような筋書きにつながっていくのか、専門家も目を見張るサプライズだといえます。

(2022年11月21日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)

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