大隅さん、日本の研究システムに強い危機感
ノーベル生理学・医学賞を受賞した東京工業大学の大隅良典栄誉教授が11日、記者会見を開き、今後は研究者の裾野が広がるようなシステムをつくりたいと話した。その言葉の背景には、日本の研究システムへの強い危機感があった。
10日にスウェーデン・ストックホルムで行われた授賞式で、メダルと賞状を授与された大隅さん。細胞のリサイクル機能「オートファジー」の仕組みを解明したとして、生理学・医学賞を受賞した。この研究は、基本原理の理解を進める「基礎研究」と呼ばれるもの。しかし、日本では、特定の成果が見込まれる「応用研究」に国の予算が割り振られる傾向にあり、「基礎研究」の分野で若手の研究者が育ちにくい環境になっているという。
大隅さん「基礎研究の大事さというのは、私を選んでいただいたことで全て」
基礎研究の重要性を訴える大隅さんは、授賞式から一夜明けた会見で、賞金約1億円は研究者の裾野が広がるようなシステムづくりに使いたいと話した。
大隅さん「若い人が自由に研究できるお金もあったらいいし、リタイアした人が、もう少し研究したい人をサポートできるシステムがあるといい」「企業が長期的展望でお金を渡してくれるシステムができたら」
3年連続で日本人受賞となったノーベル賞。国の財政がひっ迫する中、今後も優秀な研究者を育てるためには、国の予算だけに頼るのではなく、企業なども含めた社会全体で研究システムを支えていく必要があるといえる。