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日米の“橋渡し”役 ハガティ氏とは?

2017年1月23日 21:00
日米の“橋渡し”役 ハガティ氏とは?

 先週、アメリカ大統領の就任式が行われ、トランプ大統領が誕生した。その中で、注目なのが次期駐日大使に内定しているウィリアム・ハガティ氏だ。日米には、米軍の駐留経費の問題など難しい懸案事項が待ち構える中、どう腕をふるうのだろうか。


■日米の“橋渡し”役

 今回のキーワードは「日米の“橋渡し”役」。先週、アメリカ大統領の就任式が行われ、トランプ大統領が誕生した。その中で、注目なのが次期駐日大使に内定しているウィリアム・ハガティ氏だ。

 前任のケネディ氏は、先週、任務を終えて日本を離れたが、元大統領の長女として知名度が高く、親しみやすさも印象的だった。それだけでなく、大使として大きな役割を果たしたのが、オバマ前大統領の広島訪問だ。アメリカ国内では訪問に否定的な意見が根強い中、ケネディ氏は自ら何度もワシントンに足を運びオバマ前大統領に直訴して訪問を実現させたのだ。

 また、東日本大震災のときにも当時のルース駐日大使が大統領や国務長官と連携し、アメリカ軍が被災地に支援物資を運ぶ“トモダチ作戦”の展開などに力を尽くした。ただ、ケネディ氏やルース氏がこうして日米の橋渡し役として活躍したのは、大統領と直接話せるほど近しい関係だったからこそといえる。そのため、大使には“実務能力”や“日本への理解”に加えて、“大統領と近い関係”であることも期待されるポイントといえる。


■ハガティ氏の言葉「トモダチ」

 ハガティ氏は、トランプ大統領の政権移行チームで幹部を務めた人物でトランプ大統領の信頼も厚く近しい間柄のようだ。トランプ大統領はこれまでこんな発言をしていた。

 「中国、日本、メキシコ、そして他国との貿易で毎年数千億ドルが失われている」

 一方、ハガティ氏は、地元のテネシー州で経済開発庁の長官を務めていたときにこんなことを言っている。

 「(テネシー州と)日本との特別な関係を一言で表すなら『トモダチ』」「日本ほどテネシー州によい影響をもたらす国はない」

 実は、ハガティ氏は、このころテネシー州に日本企業を熱心に誘致していて、何度も来日しては日本企業と関係を築き、6年間で79社を呼び込んだという。

 かつてハガティ氏が日本で働いていたときの上司、堀紘一氏はこう話す。

 「(ハガティ氏のような)日本をよく知っていて日本が大好きという人が、トランプ大統領みたいなタフな人との間にいるってことは、アメリカ人にとってまず幸せなこと。それから日本人にとっても同様に幸せなこと」

 また、堀氏は、ハガティ氏は今回自ら駐日大使に手をあげたとも話していた。

 ただ、外務省幹部はこう言っている。

 「ビジネスマンで企業とのつながりはあったが官僚や政治家とはつながりがない。大使になってどうかは、実際やってみないと分からない」

 今後日米には、アメリカ軍の駐留経費の問題や海洋進出を進める中国への向き合い方など、難しい懸案事項が待ち構える中、どう腕をふるうのか。ハガティ氏をよく知る元部下はこう話している。

 「ハガティ氏は広く意見を受け入れる人」「彼は、交渉術を知り尽くしている。交渉の最後には必ず全員を満足させていた」


■分かり合えるまでゆっくりと

 今回のポイントは「分かり合えるまでゆっくりと」。これは日本研究で知られるライシャワー元駐日大使の言葉だ。いまトランプ大統領はアメリカ第一主義を前面に掲げ、私たちもその政権の行方を見きわめようと躍起になっている。しかし、この言葉のようにお互い時間をかけて理解し日本のことも伝えていく必要があるのではないだろうか。そのためにも駐日大使の仕事に期待したいところだ。