【核燃料サイクル】最前線、フランスの現状
東日本大震災は日本の原子力政策にも議論を巻き起こし、政府は去年、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を決断した。NNNは、核燃料サイクルに取り組む原子力の先進国・フランスを取材した。
フランス北西部の街、ラ・アーグにある原子力大手・アレバ社の核燃料再処理施設。ここがいわゆる「核燃料サイクル」の最前線だ。原発から出る使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムを取り出して新たな核燃料に作り替え、高速増殖炉で繰り返し発電に使う。
資源の少ない日本が目指す「核燃料サイクル」。しかし、政府は去年12月21日、日本政府は核燃料サイクルの中核をなすはずだった高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を決定。使った以上の燃料を生みだす「夢の原子炉」と期待されたが、ナトリウム漏れ事故などトラブルが相次いでいた。
その一方で、日本独自の核燃料サイクルの実現に向け、「第二のもんじゅ」を開発する方針を固めた。日本は同じく“核燃料サイクル”を国策として進めるフランスと連携して高速増殖炉の開発を進める方針。
そのフランスの現状はどうなっているのか。最前線を訪ねた。
アレバ社の再処理施設担当者「ガラス越しに使用済み核燃料棒が見られる世界でも珍しい施設です。使用済み核燃料棒の側面をチェックしています」
厚さ1.5メートルのガラスの向こうは、人間が2分で死んでしまうという高い放射能の世界。運転を開始した30年前から人が入ったことはなく、電球1つ取り換えるのもロボットの遠隔操作で行う。
使用済み核燃料はプールで十分に冷やされた後、切り刻み、プルトニウムを取り出す。取り出されたプルトニウムはフランスを縦断する形でラ・アーグから800キロ離れた南部・マルクールの工場へと運ばれる。
工場の担当者が制御室のモニターを指さす。
アレバ社・MOX燃料製造工場担当者「ここに見える栗色のものが、プルトニウムです」
使用済み核燃料から取り出されたプルトニウム。プルトニウム1グラムには、石油1トン分に相当するエネルギーが含まれているという。焼き固めて形を整え、金属棒に詰めて組み立てる。すると、原発から持ち込まれたのと同じ形の核燃料が完成した。これがもう一度、原発で電気を生む。
しかし、日本より先を進んでいるように見えるフランスの核燃料サイクルにも重大な欠落がある。中核をなすべき「もんじゅ」のような高速炉がフランスにも存在していないのだ。
フランスも高速炉の研究を続けてきたが、7年前に最後の実験炉の運転を停止。30年間で1000億円かかると見込まれる廃炉作業に着手したばかりで、核燃料サイクルを回し続ける高速炉は、まだ夢の世界だ。
計画に否定的な専門家からは、絶望視する見方も示された。
物理学者のピエール・ペガン氏「原子力庁は(高速炉の)分野に60年前から取り組んできたが、失敗続きだ。あまりにも複雑すぎ、危険すぎるのだ」
高速炉を柱にした核燃料サイクルは、資源の有効利用にもつながる。しかし、「もんじゅ」の失敗をきちんと総括しない限り、明るい未来は見通せない。