中東のキーマン、サウジ皇太子にいばらの道
2019年の中東情勢を占う上で、キーマンとなるのがサウジアラビアのムハンマド皇太子だ。
2018年10月、トルコにあるサウジアラビア総領事館でサウジ人記者のジャマル・カショギ氏が殺害される事件が発生。ムハンマド皇太子の関与が最大の焦点となったが、サウジ側は一貫して否定。今後も関与を認める可能性は極めて低い。しかし、疑念は消えず、サウジとムハンマド皇太子に対しては、世界中から厳しい視線が注がれている。
サルマン国王の寵愛(ちょうあい)を受け、次期国王までのぼりつめたムハンマド皇太子。世界有数の産油国サウジで、原油依存からの脱却を目指す大胆な社会・経済改革を主導し、「改革者」として注目されてきた。
改革には保守層や宗教界の反発が強いとみられてきただけに、事件をめぐり、皇太子の地位が揺らげば、影響は避けられないだろう。さらに、サウジ側が期待する国外からの投資も事件を受けて鈍るのは確実とみられ、改革そのものが停滞する可能性がある。
また、事件が起きる前はサルマン国王からの生前譲位もささやかれていたが、疑惑がくすぶる中、既定路線とみられていた次期国王就任も決して予断を許さない。場合によっては、反対する勢力が宮廷クーデターを起こす可能性も否定はできない。
サウジはイスラム教スンニ派の盟主を自認する地域大国であるだけでなく、ムハンマド皇太子自身は、アメリカのトランプ政権とも極めて良好な関係を保ち、イランに対する強硬姿勢でも足並みをそろえている。そのサウジが動揺すれば、中東そして国際社会全体に影響を及ぼすことは避けられない。
日本にとってもサウジは最大の原油の輸入元であり、エネルギー政策への懸念が生じるおそれもある。