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色丹島で見えた“北方領土交渉”厳しい現状

2019年2月1日 5:52

ロシアでは、北方領土の日本への引き渡しに対する反発が強まっている。北方領土のひとつ、色丹島の最新映像から見えてきたものは、日本にとっては厳しいものだった。

◆引き渡しに反対する世論高まる きっかけは…

ロシア・モスクワで先月20日に行われた北方領土の引き渡しに反対する集会には、市民ら500人以上が参加した。「クリル諸島は我々の領土だ!!」というシュプレヒコールがあがり、「北方領土を含むクリル諸島は『ロシアの領土だ』」と書かれた横断幕が。ロシアでは今、日本への引き渡しに反対する世論が高まっている。

きっかけは、去年11月の首脳会談だった。

安倍首相「1956年(日ソ)共同宣言を基礎として、平和条約交渉を加速させる。本日そのことで、プーチン大統領と合意しました」

1956年に日本と旧ソ連の間で結ばれた「日ソ共同宣言」には、平和条約の締結後に色丹島と歯舞群島が引き渡されると書かれている。プーチン大統領は、本当に島を引き渡すのではないか。ロシアの国民の不安が高まったのだ。

◆“渦中”の色丹島の今

“渦中”の色丹島は、今、どうなっているのか。NNNは、去年12月に撮影された映像を入手した。

色丹島の穴澗湾に、島の「ロシア化」を象徴する建物があった。ロシアの企業が経営する水産加工場だ。周辺の海でとれる魚を加工して、国内向けに出荷している。

オレグ・マズル工場長「スケソウダラ、マダラ、カレイは一年中。サバ、イワシ、サンマ、イカを時期によって加工しています」

ここでは、出稼ぎ労働者も含め約350人が働いている。工場によれば、作業監督の月収は約16万円と、ロシア全土の平均月収の倍以上だ。政府は島への移住などを促すため、最低賃金をその他の地域よりも高く設定するなどの優遇措置を取っている。

ロシアは、2007年から本格的に北方領土の開発を進めてきた。流通などが改善され、スーパーには様々な商品が並んでいる。それだけに、多くの島民が引き渡しには反対の立場だ。

色丹島の住民「島の引き渡しには反対。ここでたくさん努力したし、子ども2人も生まれた。島は子どもの故郷ですから」

◆プーチン大統領は…交渉の行方は?

先月の日露首脳会談の後、プーチン大統領は、国民の反発を気にしたのか、平和条約の締結に慎重な姿勢を示した。

ロシア・プーチン大統領「両国が容認できるような解決のために、私たちは丹念な作業を行わなければならないと強調したい」

島の引き渡しに対するロシアの国民の反発が強まる中、交渉の先行きは不透明感を増している。