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ガザ地区 支援物資求め海へ…12人が溺死 最南部ラファは”人間の尊厳が奪われた世界”

2024年3月27日 19:45

パレスチナ自治区ガザ地区では、住民が飢餓寸前の状態に陥るなど深刻な人道危機が続いています。こうした中、海に落下した支援物資に住民が殺到し、12人が溺れて死亡しました。

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パレスチナ自治区ガザ地区の北部ベイトラヒアで撮影された映像には、空からパラシュートで降りてきた支援物資が映っています。これに人々が殺到しましたが、一部が海へ落下。

ガザ市民
「海に入って300メートル以上沖からこれを取ってきました」

多くの人が物資を確保するため、海に入りました。中には、意識のない男性もいました。

パレスチナ自治区の保健当局によると、12人が溺れて死亡したということです。

ガザ市民
「このやり方はダメです。ひどすぎる」
「検問を開ければ(車で)大変な人々に届けられます」

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多くの住民が飢餓寸前の状態とされ、今、深刻な人道危機に瀕しているガザ地区。私たちは、南部ラファで活動している国連の支援機関UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の清田明宏保健局長から話を聞くことができました。

UNRWA 清田明宏保健局長
「大体4万人いる(避難所)にトイレが16個しかなくて、単純計算すると多分2000人に1個ぐらいしか(トイレが)ないんですね」

戦闘を逃れてきた100万人以上が避難しているラファ。すべての物資が不足していて、飲み水は1人1日500ミリリットルだけ。子供のオムツや女性の生理用品は、大人用のオムツを切って代用しているといいます。衛生状況も悪く、A型肝炎が流行するなど劣悪な環境下での暮らしを強いられている人々。

UNRWA 清田保健局長
「あるクリニックで会った29歳の若い女性医師は、子供にガザの家の写真を(見せたら)、子供が大好きだった自動車のおもちゃ(の写真)が出てきたんですって。子供が『これはどこに行ったの、乗りたい』って大泣きをして、その彼女が全く何も答えられなくて、ただ子供を抱きしめて泣いてたと言っていて、本当に泣き出してしまって」

「もう本当に人間の我慢できる限界は、とっくの昔に超えてるんじゃないか」

そして、最もショックを受けたというのが、人々の“心が壊されている”という現実です。

UNRWA 清田保健局長
「ある40代の男性は『私の体の中は全部壊れている』とか、もう明日のことは考えない、今日のことしか考えられないと。ここまで人間の尊厳というか人間が生きる希望、人間が明日に向かって考える力を奪っていいのかというのは、ものすごく感じた」

その、限界を超えた人々に襲いかかるさらなる恐怖。それが、準備が進められているイスラエルによるラファへの地上侵攻です。

UNRWA 清田保健局長
「こちらの人は本当にもう(地上侵攻について)考えたくない。それを考えると夜も眠れないと。どこに逃げるんだっていうと、本当に途方に暮れてもう考えたくないと」

清田さんは、一刻も早い戦闘休止と支援の強化が必要だと訴えています。

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