ハルキウ州“危険と隣り合わせの村”から避難......86歳女性「どうにか生き残れば」 佐藤和孝氏が現地取材 侵攻1年の「爪痕」
ジャーナリストの佐藤和孝さんが、間もなく侵攻から1年を迎えるウクライナ・ハルキウ州を取材。自力で避難できない人を救出する支援団体に同行し、ふるさとを追われる人たちに聞きました。街中では攻撃の爪痕を使って絵を描くアーティストに迫りました。
◇◇◇
■中心部の国立大学にも「攻撃の跡」
ジャーナリストの佐藤和孝さん(ジャパンプレス)が 15日に向かったのは、ウクライナ第二の都市・ハルキウです。市内の国立大学を訪れた佐藤さんは「10日前にロシア軍の空爆を受けました。ここは郊外でもなんでもない、ハルキウの中心部です」と言います。
中心部から 7 キロほど離れた地区では、建物など至る所に攻撃の爪痕が残っていました。「ここは今でも非常に危険な場所で、ほとんど住民が立ち去ったということです」
攻撃を受けたアパートに住んでいたという女性は「ここが私のふるさとです。ここで暮らしたい」と漏らしました。人々が、住み慣れた場所を追われています。
■激戦のドンバス近くから...避難を支援
16日には、ハルキウの人道支援団体に同行しました。自力では避難できない人々を救出しています。この日依頼があったのは、去年9月上旬までロシア軍が占領していたという、ハルキウ州の東部の村・キンドラシフカからの避難です。
激戦が続くドンバス地方から近い、危険と隣り合わせの村です。ここからひとまず、ハルキウ市内へ移動させ、その後ポーランドなど、より安全な場所へ避難させます。
■避難した女性「来てくれて良かった」
団体のスタッフが「ナタリアさん、こんにちは」とあいさつすると、ナタリアさん(86)は「あなたたちが来てくれて良かった」と笑顔を見せました。
雪が降り積もる中、スタッフが歩行器を使って歩くナタリアさんに寄り添い、避難をサポートしました。
――お気持ちいかがですか?
ナタリアさん
「さみしいですね。今はどうにか生き残れば...」
――ロシア軍がここに来たことは?
「もちろんありますよ。人々から車などを奪っていました」
この日は 3人の女性を避難させました。スタッフは「ほぼ毎日活動しています。できるだけ多くの民間人を避難させたいのです」と言います。
■士気高めるアートにも「攻撃の跡」
今もロシア軍による攻撃が続く中、ハルキウではウクライナ軍の士気を高めようと、街中に絵を描くアーティストがいます。
15日に取材すると、攻撃の跡を使って表現した“花”が地面に描かれていました。「侵略者の花 それはクラスター爆弾です」とありました。
ストリートアーティストのジンキフスキーさん(36)が「ここにも弾の痕があります。5か月前はここの壁は全て破壊されていました」と教えてくれました。壁画のような他の作品を前に「弾の痕がたくさんある」と言いました。
ハルキウに残り、絵を描き続けるジンキフスキーさんに佐藤さんが尋ねました。
――戦争が終わったら何をしたいですか?
「それは遠い未来なので、今は考えられないです。私は停戦の日が来るのを待ちくたびれました」
(2月17日『news zero』より)