“221年ぶり”…2024年初夏 アメリカでかつてない規模の「セミ」が大発生?
アメリカメディアが“今年は1803年以来、221年ぶりのセミの大発生が予想される”と報じ、米国内で話題となっている。一体、何が起きているのか。
■アメリカで初夏に“かつてない規模”のセミが…?
日本で我々が普段、目にする「アブラゼミ」「ミンミンゼミ」「ツクツクボウシ」などは、5~10年を地中で幼虫として過ごし、羽化した後は2週間程度の命とされている。
一方、アメリカにいるセミが土の中で過ごす期間は、もっと長い。アメリカ北部には17年周期で地上に現れる「17年ゼミ」が生息し、南部には13年周期の「13年ゼミ」が生息している。これらは「周期ゼミ」と呼ばれ、昆虫では世界最長級の生活史を持ち、世界で唯一、アメリカの東・中・南部に生息している。
いずれも体長は3センチほどで、アブラゼミよりひと回り小さく、赤い目が特徴的だ。このセミが周期の違いで数年ごとに北米各地で大発生を繰り返し、アメリカではニュースになる。発生年度ごとに「ブルード」(集合体)として通し番号をつけて区別していて、前回は2021年に「17年ゼミ(ブルード10)」が首都ワシントン近郊で発生し話題となった。「周期ゼミ」は○年周期の年数部分が素数であることから、「素数ゼミ」とも呼ばれている。
■2024年が周期ゼミの“当たり年”のワケ
では、今年予測されている大量発生は、「17年ゼミ(ブルード10)」が発生した2021年とどう違うのか? 「素数ゼミの謎」の著書で知られる、生物学者の吉村仁名誉教授(静岡大学)によると、アメリカには、
●17年周期で発生するセミが12ブルード
●13年周期で発生するセミが3ブルード
が存在しているという。(発生年度の違いを「ブルード」で区別)
その周期を表したのが、こちらの表だ。2021年にワシントン近郊で発生したのは、17年ゼミの10番目=「ブルード10」であったことがわかる。
また直近だと、2015年に「17年ゼミ(ブルード4)」と「13年ゼミ(ブルード23)」が221年ぶりに同時に発生している(※13と17の最小公倍数が221)。ただ、吉村教授によると、2015年は発生地域がアメリカ南部に限られていて、専門家もセミを見つけて収集するのに苦労するほどだったということで、「大量発生」という印象はなく、当時はあまり一般の話題には上らなかったもようだ。
■専門家「今年のセミは歴史的に最大の数になる可能性」…“1兆匹以上”の周期ゼミが大発生?
では、同時発生した2015年と、今年2024年はどう違うのか? 吉村仁名誉教授は下記のように予測している。
「今回の『17年ゼミ(ブルード13)』はシカゴを中心に非常に密度が高く大発生することに加え、『13年ゼミ(ブルード19)』は3つのブルードのうち個体数が最大で発生地域が広大のため、歴史的にも最大の数になる可能性がある」
アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは「全米およそ16州にわたって1兆匹以上のセミが出現する可能性が高く、鳴き声は飛行機よりも大きな音になることもある」と報じている。
221年ぶりとなる周期ゼミの大発生は今年4月中旬から6月初旬にかけて予想されていて、13年ゼミと17年ゼミの生息地域が重なるイリノイ州では多くの個体を見ることができそうだという。