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5G「たぶん米国も追いつかない」――中国100万局超え、専門家「科学技術は安全保障と直結」 クアッド、対中“警戒”あらわ

2022年5月25日 9:57
5G「たぶん米国も追いつかない」――中国100万局超え、専門家「科学技術は安全保障と直結」 クアッド、対中“警戒”あらわ

日米豪印の4か国が協力する枠組み「クアッド」の首脳会合が24日、東京で開かれました。前面に出たのは、中国への警戒。5Gなどの分野でも連携を強化することで一致しました。首脳会合に合わせ、日本の周辺ではロシア軍と中国軍の爆撃機が共同飛行しました。

ロシア国防省が24日夜、「TU-95」とみられる爆撃機の映像を公開しました。中国軍と合同で、日本海と東シナ海でパトロール飛行を実施したと発表しました。

日本の防衛省もこの事態を把握していて、24日午前から午後にかけ、ロシア軍の爆撃機2機が中国軍の爆撃機2機とともに日本の防空識別圏を飛行しました。領空侵犯はなかったということです。

自衛隊が撮影した写真でも、ロシア軍と中国軍の爆撃機が一緒に飛んでいることが分かります。

クアッド首脳会合が日本で開かれるさなかの共同飛行。岸防衛大臣は『これまでに比べ挑発度を増すものと考えています』と述べました。政府は、ロシアと中国に外交ルートを通じ、懸念を伝えたということです。

24日午後6時すぎ、大統領専用機「エアフォースワン」に乗り込んだアメリカのバイデン大統領。就任後初めてのアジア訪問を終え、帰国の途につきました。

■大統領「車列」に熱視線…追う大学生

バイデン大統領の来日最終日も、その姿を一目見ようと沿道に多くの人が駆けつけました。車の中の大統領は、サングラスにマスク姿でした。

その瞬間を捉えようと、19歳の大学生が脚立に乗ってカメラを向けていました。

――バイデン大統領のファン?

「もちろんそれもあるんですけども、車列と(大統領専用の)『ビースト』という車がすごく好きで、今回撮りに来ました。(アメリカ国)旗も全部入れられて撮れたので、100点満点だと思います」

自画自賛した写真には大統領は写っておらず、車列だけでした。23日夜も「いやー、初めて車列見たんで感動しました」と語っていました。やはり車列狙いでした。

友人とともに24日の車列を撮り終えると走り出し、高層ビルに向かいました。目的は、大統領らを乗せたヘリの機体でした。大学生は「さまざまな特殊な乗り物を撮ることができたんで、非常に満足しています」と話しました。

日本、アメリカ、オーストラリア、インドによる24日の「クアッド首脳会合」の特徴は、中国への警戒が前面に出たことです。

議長を務めた岸田首相も名指しこそしませんでしたが、「力による一方的な現状変更は、いかなる地域においても許してはならない。こうした認識でも一致をしました」「自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた、実践的な協力を進めていく」と述べました。

対中国の中でも注目すべきなのは、自動走行などで活用される、大容量の高速通信が可能な「5G」です。バイデン大統領は「われわれは既に多くのことを達成している」「5Gやサプライチェーンでの協力関係もそうだ」と言及していました。

東京オリンピックでも使われ、肉眼では見えづらい競技もドローンなどが撮影した複数の映像を「5G」で瞬時に送って合成。巨大モニターに映し、間近で観戦できるというものです。

■中国企業「5G」最大シェア…行方は?

その5Gで最大シェアを占めるのが、中国の通信機器大手「ファーウェイ」です。今回、4か国は中国のこうした状況を意識したのか、5Gなどの分野で連携を強化していくことで一致しました。

ただ日本の通信事業の関係者は「今もファーウェイ製の部品は日本の通信事業者の中でも一部使われていると思う。今後も使えるのか明確にしてくれないと、5Gのエリア拡大のために基地局を増やそうとしているので困る」と注文しました。

専門家に聞きました。

科学ジャーナリスト・倉澤治雄さん
「中国は(5G)の基地局の数が100万局を超えましたので、日本はまだまだ追いつかない。たぶんアメリカも追いつかないでしょうね。科学技術は安全保障と直結するので、アメリカとしてはこのまま黙って見ていられないというところが、非常に大きいと思いますね」

■中国抜きで…「5G」連携どこまで?

有働キャスター
「5Gなど先端技術について、中国抜きでの連携をどう捉えていますか?」

落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「西側諸国が警戒するのは当然だと思っています。バイデン大統領も24日発言していましたが、特に台湾有事を考えて動かないといけない。有事があると仮定すれば、そういう敵国に通信網を取られて有事に発展するようなことが起こり得る状態はよくありません」

「中国にしても、中国の大手配車アプリ『DiDi』がアメリカでの株式上場をやめたのは、データをアメリカ側に抜かれるのがイヤだという理由もあるという話もあります」

有働キャスター
「中国側にとってもそうだと」

落合さん
「お互いにとってデータを見せたくないこともある。中国側がそういう姿勢でいる限りは、5Gで後れを取るかもしれませんが、いざという時の安全には代えられないのではないか、というのは重々理解できる判断だと思います」

有働キャスター
「ただファーウェイなど中国製の機器を使って、組み込んでいるところもあります。それはどうするのでしょうか?」

落合さん
「部品を切り替えていくか、内需で作り直すか、サプライチェーンを組み換えるか。どれも同じ結論ですが」

有働キャスター
「組み換えや切り替えは簡単にいくのですか?」

落合さん
「徐々にやるしかないのではないでしょうか。一気にすぐにはいけないと思います。半導体製造の時間もありますので」

有働キャスター
「影響が大きそうですね」


(5月24日『news zero』より)