台湾総統選挙「民進党優位の終わり」「国民党長期衰退傾向」…研究者の受け止め
今月行われた台湾総統選挙。その結果について分析する研究会が、26日、都内で開かれました。総統選挙は、与党・民進党の候補が当選しましたが、登壇した台湾政治の研究者からは、「民進党の優位時代が終わった」などと厳しい見方も。今回の結果から見えてきたものとは?(国際部・坂井英人)
今月13日に行われた台湾総統選挙は、中国と距離を置きアメリカとの関係を重視する民進党の頼清徳氏が勝利し、民進党政権の継続が決まりました。
■「民進党の優位時代が終わった」
東京外国語大学名誉教授で台湾政治研究者の小笠原欣幸氏は、26日に早稲田大学で行われた「台湾総統選挙研究会」で、今回の結果について、得票率が相当接近している点を指摘しました。
国民党・侯友宜氏と民衆党・柯文哲氏の合計の得票率(60.0%)が、当選した頼氏(40.1%)を上回ったことから、「総統選挙における民進党の優位時代が終わった」と分析しています。
同じ日に行われた立法院(日本の国会に相当)の選挙では、全113議席のうち、中国との対話を重視する国民党が最多の52議席を獲得。民進党(51議席)を1議席上回って第一党の座を確保しています。
ただ、両党とも過半数(57議席)に達せず、8議席を獲得した第三政党の民衆党がキャスチングボートを握っている状態に。今後の政権運営にとってこの8議席が大きな意味を持つと強調しました。
小笠原氏はさらに「選挙の争点」について、頼氏と侯氏が明確に「中台関係」の争点化を図ったものの、中間派の有権者にはあまり響かなかったとみているということです。
柯氏が中台関係について、あいまいなスタンスをとったことも影響し、「中台関係が争点であったか」は「頼氏・侯氏の選挙戦略をみれば『争点だった』となるし、柯氏の選挙戦略をみれば『大きな争点ではなかった』となる。どこを見るかで(争点は)変わる」と指摘しました。
■「国民党の長期衰退傾向がはっきりした」
小笠原氏に続いて研究会で報告した東京大学教授の松田康博氏は、投票率が下がったにもかかわらず民進党が比例区で票数を伸ばしていることから「実は岩盤支持層が増えている」と分析。
一方で、国民党は総統選挙の得票率が、3回連続で40%に達していないことや、政党票も伸び悩んでいることから、「今回、非常によくわかったのは、国民党の長期衰退傾向だ」と指摘しました。
次回、2028年の総統選挙をめぐっては、民衆党の柯氏がすでに出馬の意向を示しており、再び3候補による争いになると予想されることから、「民進党が(得票率)40%を確保すれば、頼氏の再選は十分可能だ」との見方を示しました。
また、中国が選挙結果について「民進党は台湾の主流の民意を代表できない」などと反応したことについて、台湾で統一支持者が意味が無いほど少なくなっている現状を認めてしまうと、武力による統一をしなくてはならなくなるため、「武力行使をしなくてすむ理由を構築している。中国は戦争をしたくないからだ」としました。
その上で、4年後の総統選挙に向けて野党候補一本化を目指し工作を行うだろうと指摘しています。
日本と非常に関係の深い台湾。東アジアの安全保障にも大きく関わる台湾の政治が、どう示されていくのか。新総統の就任は5月です。