処理水"猛反発”中国は今…放出から3週間 姿消した“迷惑電話”動画 一方で「核汚染水」批判報道続く

8月24日から始まった東京電力・福島第一原発の処理水の海への放出をめぐり、中国は政府やメディアを挙げて「核汚染水」と非難。これに呼応して日本の省庁や店舗などへの迷惑電話や、SNS上でデマの投稿が横行した。あれから3週間、自ら火をつけた批判キャンペーンは逆に、中国国内にもじわじわと負の影響を及ぼしつつある。
(NNN中国総局 森葉月)
■中国メディアの報道に呼応し…依然、市民から“怒りの声”
9月11日、東京電力が8月24日から始めた第1陣の処理水放出を終えたと発表すると、中国メディアも即座にこれを報じた。記事では、放出の間に行われた一連のモニタリングで問題のある値は一切出てなかったことには触れず、依然として「核汚染水」という用語を使っている。
こうした記事に対し、中国国内では批判のコメントであふれた。「世界から日本はなくなってもいいが、海はなくなってはいけない」「一生、日本を許さない」「あと30年も続くのか…」「断固として日本を排除し、日本製品を排除する。日本産の食品すべてを輸入禁止にしてほしい」…。
■放出前から始まった“対抗措置” 人気の「おまかせ」にも影響
中国は、2011年の東日本大震災以降、福島県や東京都など10都県からの全ての食品の輸入を停止していた。しかし、北京の日本料理店からは処理水の海洋放出が始まる1か月以上前から「北海道のホタテに四国のタイも…なぜか税関検査が通らない」と嘆きの声が聞こえてきた。
実は中国は対抗措置の一環として、水面下で日本全国の水産物の放射線検査を実施し、税関検査に時間を要していたのだ。
近年、中国では、日本料理の「おまかせ」コースが人気を博している。北海道のホタテ、青森・大間のマグロを頰張る写真がSNSに投稿され、日本円で一人あたり4万円の値段設定もお構いなしの人気ぶり。日本の海鮮は「美味・安心・安全」が代名詞だった。
しかし、この日本の海鮮が一気に逆風にさらされることになった。7月、日本から輸入したホタテは、前月に比べ97%も減少した。日本の水産物を輸入する業者は肩を落とした。「手元に届くまでに通常の5倍以上、日数がかかり、注文していた300の魚のうち、販売できる状態だったのはわずか10点。損失は4000万円以上だ」
影響は魚類だけに留まらず、処理水の放出前から中国の市場では“日本外し”が加速した。納豆のたれには「かつおエキス」、アイスクリームには「海洋深層水」が入っていると判明すれば、その時点で税関でストップの判断となり、結局、廃棄処分になってしまったという。