×

“紅茶に塩とレモン”に英専門家「ナンセンス」と批判…提唱する“正しい紅茶の飲み方”とは?

2024年1月28日 13:15
“紅茶に塩とレモン”に英専門家「ナンセンス」と批判…提唱する“正しい紅茶の飲み方”とは?
イギリスの紅茶の専門家ペティグリュー氏

アメリカの研究者が発表した「紅茶に塩とレモンを入れる」というレシピをめぐり、米英で論争が巻き起こっています。イギリスの紅茶の専門家に、問題となったレシピに対する反応と、提唱する「正しい紅茶の飲み方」を取材しました。

■米研究者提唱の“紅茶に塩とレモン”めぐり米英で論争

アメリカの研究者ミシェル・フランクル氏が「完璧な紅茶のレシピ」として、「紅茶の苦みを取り除くため、塩とレモンを入れるべき」とする研究結果を発表したことをめぐり、アメリカとイギリスの間で「紅茶の飲み方」をめぐる論争が巻き起こっています。

在英アメリカ大使館は「イギリスの国民的飲み物に塩を加えるという、あり得ないアイデアは、アメリカの公式な方針ではないことをイギリス国民に保証します」とする声明を出した一方、その声明の締めくくりに「アメリカ大使館は、紅茶を電子レンジで温めていれるという正しい方法をこれからも続けていく」と投稿しました。

これに対して、イギリス内閣府はSNSで、「紅茶は、やかんを使わないといれられない」と反論し、在ワシントンのイギリス大使館も、紅茶のいれ方に関する動画を投稿してアメリカ側をけん制。

イギリスメディアは、このやりとりを「新しい紅茶戦争だ」と伝えるなど、ジョークを交えた応酬が続いています。

■「紅茶戦争」に米英の市民の反応は?

「紅茶の飲み方」をめぐる論争について、イギリス・ロンドンで、米英それぞれの市民に話を聞いてみました。

イギリス人からは、意外にも「紅茶に塩を入れたことはないけれど、試してみようかなと思う」と意欲的な反応が。ただ、「電子レンジで紅茶をいれる」方法については「冒とく。恐ろしい」など、否定的な意見が多く聞かれました。

一方、ロンドンに滞在するアメリカ人からは「紅茶に塩なんて入れたら、イギリス人にケンカを売るようなものだよ」と、「紅茶に塩」のレシピについて否定的な意見も。ただ、「電子レンジで紅茶をいれる」ことに関しては、「なぜ、それが大きな問題なのか、わからない。お湯はお湯でしょ。あまり変わらないと思う」と、「紅茶には、やかん」とするイギリス側の意見に反対する声が上がりました。

紅茶に関して論争が巻き起こることについても、アメリカの建国の歴史につながる「ボストン茶会事件」を引き合いに「紅茶をめぐる問題が両国にあることで、紅茶はセンシティブな話題なのだと思う」と分析する人もいました。

■英専門家はレシピを「ナンセンス」と批判

ロンドンでは、イギリス人から「アメリカ人はイギリス人のように、正しい紅茶のいれ方を学ぶべきだと思う」という意見も上がりました。イギリスの紅茶の専門家は、今回の論争をどう見ているのでしょうか。「イギリス紅茶アカデミー」のディレクターを務めるペティグリュー氏を訪ね、アメリカの研究者が提唱するレシピを再現してもらいました。

ペティグリュー氏「塩の味で、お茶が完全に変わってしまいました。のどの奥に苦みも感じて、とても変な味です。飲めたものではないですね」

ペティグリュー氏は「塩を入れるというアイデアは、とてもナンセンスだと思いました。その背景には、科学的な根拠があると思いますが、そのやり方は間違っていると思います」と述べ、塩を入れるのは勧められないと話します。

記者も、ひと口飲んでみましたが、塩味が強く感じられ、「苦みが消える」というよりも、紅茶本来の風味が失われている印象でした。

■英専門家提唱の「正しい紅茶の飲み方」とは?

では、専門家が提唱する「正しい紅茶の飲み方」とは、どんなものなのでしょうか。

ペティグリュー氏「まず、フィルターに通した水道水を用意します。電子ケトルに水を入れ、温度は95℃に設定します。この温度が紅茶にとって最適なんです」

1.計量
ペティグリュー氏「次に、茶葉の分量を正確に量ります。300ミリリットルの水に対して、3.75グラムです。正確に量るのが大切なので、計量器を使ってください」

2.蒸らし
ペティグリュー氏「ポットに茶葉とお湯を入れて、今回使う茶葉では、蓋をして3分蒸らします。時間は茶葉によりますが、長く蒸らしすぎると苦みが増して味を損なうので、注意が必要です」

3.注ぎ
ペティグリュー氏「蒸らし終わったら注ぎますが、最後の一滴まで注いでください。お湯が残っていると、2煎目が渋くなりすぎるので使えなくなってしまいます。良質な茶葉は、2煎目、3煎目といれることができるので、この作業はとても重要です」

ペティグリュー氏は、温度管理と茶葉の計量が重要だとしていて、その観点から、「電子レンジでお茶をいれる」という方法については「絶対にやらないでください」としています。

また、レモンを入れることに関しては、「少量であれば問題ないものの、レモンを大量に入れる人がいますが、そういう人は紅茶ではなく、ホットレモンを飲むべきだと思います」と述べました。その上で「今回の論争は単なるジョークだ」として、「アメリカとの関係が悪くならないことを祈ります」としました。

■「塩ひとつまみ」アメリカ研究者のレシピ

最後に、論争の発端となったアメリカの研究者が提唱する「紅茶の飲み方」を紹介します。

・紅茶に塩をひとつまみ加える
(塩が紅茶の苦味を出す化学的メカニズムを阻害するため)

・ティーバッグでいれる場合は、よく絞る
(渋みを出すタンニンを減らすため)

・レモン汁を少し搾っていれる
(紅茶に含まれる「アク」を取り除くことができる)