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感染第2波「どうすれば…」もがくイギリス

2020年10月27日 21:47
感染第2波「どうすれば…」もがくイギリス

イギリスが新型コロナウイルス感染の第2波に襲われている。人口が日本のおよそ半分にもかかわらず10月4日には1日あたりの新規感染者が2万人を超え収まる気配がない。

1日およそ30万件実施されるPCR検査を考慮しても衝撃的な数字だ。出口の見えない長い戦いに「いったいどうすれば感染が収まるのか…」という焦燥感だけが募る。

■2度目の外出禁止令に踏み切れないイギリス政府

ロンドンがあるイングランドでは感染レベルを3段階に分け深刻度によって対策を変える手法が取られた。最も深刻なリバプールなどではパブやバーが終日閉鎖に。人々は公園などを除き他の世帯との交流もできなくなっている。

一見、厳しい規制に見えるがレストランや商店の営業は禁止されていない。飲食店や多くの商店の営業ができなくなり、事実上の外出禁止令が出された第1波のときの規制とは大きく異なる。

背景には落ち込んだ経済、長引くコロナ禍で精神的なダメージを受けた人々に第1波のような強い規制をかける事態は避けたいというイギリス政府の考え方がある。

■苦肉の策?『ファイヤー・ブレイカー』

イギリスは大きくイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドに分かれていてそれぞれが自治を行う。そのため地域によって新型ウイルス対策も多様という独特の現象が起きる。

イングランドと異なり強い規制に踏み切ったのが南西部のウェールズだ。10月23日の午後、最大都市カーディフに行ってみると食事を楽しむ人々の姿があった。天気の良い週末の金曜日。町のシンボルである美しい城を眺めながらの1杯はこの地方の人々が大切にしてきたひとときだ。

しかし薄暗くなり始めると飲食店は一斉に閉店作業を始めた。午後6時からおよそ2週間『ファイヤー・ブレイカー』という規制が始まるからだ。

文字通り感染の“火を抑え込む”わけだが大きな特徴は「短期間に集中」という点。一時的に強い規制をかけ人々の接触を遮断することで第2波の感染の連鎖を断ち切ろうというのだ。

生活必需品を販売しない商店の営業は禁止され人々は自宅に留まることが求められる。短期間“限定”のため経済への影響を極力抑えられるといういわば「落としどころ」を探った結果の感染対策と言える。

■また厳しい規制…人々はどう受け止めた?

『ファイヤー・ブレイカー』は第1波のときに出された外出禁止令に次ぐ強い規制といえる。

ウェールズの人々はどう受け止めているのか。話を聞いてみると多くの人が「2週間だけなら頑張れる」と答えてくれた。感染者数は第1波の時より大きく増えているものの死者は大幅に抑えられている。「もううんざりだ」という声が多いだろうと予想していたので意外だった。
人々がこう受け止めるなら『ファイヤー・ブレイカー』を導入したウェールズ自治政府の狙いは成功したと言える。

一方、短期間とはいえ経済に負荷がかかることに変わりは無い。大通りに面したカフェで働く男性従業員は「今の状況なら仕方ない」と理解は示しつつ、経営的には大きな打撃になるとため息をついた。

■答えの見えない戦い

『ファイヤー・ブレイカー』は有効な対策として機能するのか?短期の規制強化でどこまで感染を抑え込めるかは不透明でイギリスメディアからは「時間稼ぎにしかならない」との指摘もあがる。

しかし初めから正解が分かっていればヨーロッパのほとんどの国が苦しむ第2波は起きていない。どの程度の規制をかければ感染を効果的に抑え込みかつ経済への打撃を小さくできるのか。この難問に挑むイギリスの苦悩は続く。