“経済低迷”で政府に不満 失敗連続「貧困脱却は言葉だけ」中国の“国会”全人代が5日に開幕
中国の国会にあたる全人代が5日に開幕し、トランプ政権の関税政策を念頭に、先行きに懸念を示しました。また、低迷する国内経済に関して地方を取材すると、「貧困脱却は言葉だけ」などと政府への不満が浮き彫りとなりました。
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5日午前から始まった中国の国会にあたる「全人代」。開幕式で李強首相は…
中国 李強首相
「外部環境はいっそう複雑で厳しさを増し、我が国の貿易や科学技術などにより大きな衝撃を与える可能性がある。一国主義と保護主義が激化し、国際経済循環を阻害している」
アメリカ・トランプ政権による関税政策を念頭に批判しました。
その一方で「消費が落ち込んでいる」と指摘したのが、国内経済です。中国南部に位置する広西チワン族自治区の柳州市(りゅうしゅうし)。この町も経済が低迷する都市のひとつです。
町で味わえるひときわ独特のにおいをはなつのが…
柳沢高志記者・NNN柳州市
「鼻をツーンとつくような独特なにおいですね。くさいですね」
田んぼや池に生息するあのタニシをスープの材料に使った、その名も「タニシラーメン」です。
中国・柳州市民
「とてもおいしい料理だと思っている。毎日食べています」
町の“ソウルフード”になっているだけでなく、いま中国全土で爆発的な人気に。1日660万食以上が売れているといいます。
これに目をつけたのが地元政府です。ブームにあやかり、観光の目玉として5年前、タニシラーメンの博物館を建設。しかし問題が…
記者
「人の姿がまったくありません」
客が激減し赤字が続いたため去年、たったの4年で閉館(※ただし団体客のみオープン)。中国のSNSでは「無駄な施設だ」と批判の声が上がっているのです。
地元政府の“失敗”はこれだけではありません。街のメインストリートに約10キロにわたり建てられたコンクリートの柱。市内の中心部と空港を結ぶ鉄道が、ことし運行を開始する予定でした。
記者
「駅は完成していて券売機や改札口もありますけれども、まったく使われていない状況です」
2021年に工事は完全にストップ。未完成のまま放置されているのです。
周辺住民
「つくるのも壊すのも金がかかる。人も金も無駄だよ」
なぜ工事が中止になったのか、理由は柳州市の深刻な財政難でした。市の収入は、この5年で3割以上も減少していたのです。
その最大の原因が、中心部から車で40分ほど離れた農村で明らかになりました。畑の奥に、そびえ立つ建物。
記者
「高層マンションの建設現場ですが、工事はストップしたまま、誰も人はいません」
地方政府は農家らの畑の大部分を買収。不動産開発会社に土地の使用権を売り渡すことで収入を得る計画で、2020年から高層マンション群を約130億円かけて建設する予定でした。しかし、景気が不況になり“不動産バブル”が崩壊。地方政府は多額の“隠れ借金”を抱えることになったのです。
そして畑を取り上げられたかわりにマンションに移り住むことが約束されていた農民たちから聞かれたのは「生活の苦しさ」と、「政府への不満」でした。
「生活は苦しいよ。みんなボロボロの服を着ているでしょ」「外の道路もボロボロなのに、政府は何もしてくれない。ここには街灯もないんだよ」
2020年、政府は柳州市のすべての地域が貧困状態を脱したと発表していましたが…
「貧困脱却は言葉だけだよ。発表前の方が畑を耕せて、まだ暮らしは楽だった」
孫をおんぶした鐘(しょう)さんもそのひとりです。現在は、夫と娘夫婦の出稼ぎによる年間60万円ほどの収入で、家族7人の生活をまかなっているといいます。
「生活は楽ではありません。子どもの教育にもお金が必要です」
移り住む予定だったマンションも、地元政府からの説明はまったくないといいます。
「あそこに住めるはずだったのに、その望みはかなわなそうです」
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地方で高まる不安と不満をどう抑えられるのか、習政権に大きな課題が突きつけられています。