処理水放出に中国が反発 “日本の魚”に厳しい規制 “デマ”も飛び交い…
今、中国で日本の魚が手に入りにくくなっています。背景にあるのは福島第一原発の処理水放出計画です。中国国内で何が起きているのか、現地を取材しました。
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中国からの観光客
「お寿司を食べました」
8日に東京・浅草で出会ったのは、日本の寿司を堪能したという、中国から来た観光客です。
中国からの観光客
「日本のお寿司は新鮮です。おいしいし、安いの」
中国からの観光客
「また食べたい」
観光客から大人気の日本の魚ですが、今、中国では“日本の魚が食べられない”問題が起きているのです。
香港からの観光客
「日本の魚の輸入が少ないから、みんな並んで必死に食べに来るの」
――なぜ少ない?
香港からの観光客
「処理水のことでしょ」
背景にあるのは、福島第一原発に保管されている大量の処理水の放出計画です。政府は今後の廃炉作業を進めるため、放射性物質「トリチウム」などの濃度を環境基準値よりも大幅に薄めた上で、8月下旬にも海に放出することを検討しています。
この計画に、観光客は…
香港から来た観光客
「(日本の魚は)安心して食べます。品質がいいから」
ただ、影響を心配する人もいます。
マカオからの観光客
「実はちょっと処理水が気になったので、今のうちに食べに来ました」
マカオからの観光客
「しばらくしたら、もう食べないつもりです」
懸念の声は日本の漁業関係者からも上がっていて、渡辺復興相は8日に福島県の漁業関係者と面会しました。
国内でも対応に追われる中、処理水の放出に強く反対する姿勢をみせているのが中国です。
記者(中国・北京)
「北京市内の海鮮市場です。ずらりと魚が並んでいますが、その多くが中国産で日本のものは全く入ってきていません」
日本の海産物が市場から姿を消していました。中国当局は日本の海産物を輸入する際に全面的な放射線検査を始めていて、通関の手続きに数倍の時間がかかり、鮮度の維持が困難になっているのです。その影響は、中国産の魚にも及んでいました。
――中国産の魚の値段はどうですか?
水産業者
「前より高くなりました。10%~20%くらい」
日本料理店などが仕入れる高級魚を中心に、中国産の魚が高いもので3割近く値上がりしているといいます。
水産業者
「日本が処理水を放出するとの話が出てから、中国にくる日本の魚がなくなったことが原因だよ」
値上がりは、中国産だけではありません。
日本料理店「毎度」 橋場信行オーナー
「これがカナダ産のボタンエビ」
北京市内の日本料理店で話を聞くと、冷凍のカナダ産ボタン海老が2割ほど値上がりしたといいます。
日本料理店「毎度」 橋場信行オーナー
「すべてが(値上がり)となってくると、しんどいかもしれない」
さらに、処理水に関するデマも飛び交う事態になっています。
中国のSNSではイラストが拡散していました。「正常」と書かれたイラストでは、水色の冷却水が放出されている一方、「福島」と書かれたイラストでは、壊れた炉心から放射性物質があふれ出し、“核汚水”という濁った水が放出されているかのように説明しています。誰が何の意図で作成したイラストなのか。イラストの根拠や目的などをメールで問い合わせましたが、回答はありませんでした。
これらのニセの情報による誤解を減らすため、日本政府は動画を作成しました。
外務省YouTube
「放射線影響評価などの結果、人や環境への影響は無視できる程度だと確認されています」
日本政府は8月下旬にも放出することを検討していますが、中国は日本への圧力をさらに強めそうです。