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【時系列】プリゴジン氏の行方は…?ロシア民間軍事会社ワグネル“反乱” まとめ

2023年6月26日 21:19
【時系列】プリゴジン氏の行方は…?ロシア民間軍事会社ワグネル“反乱” まとめ

ウクライナへの侵攻を続けるロシアで、民間軍事会社「ワグネル」のトップであるプリゴジン氏がロシア軍への反乱を宣言し、一時モスクワに向けて進軍しました。ベラルーシのルカシェンコ大統領が仲介に入り、反乱は収束しました。ベラルーシの国営メディアは27日、プリゴジン氏がベラルーシにいると伝えました。ワグネルはウクライナ侵攻でロシア軍に協力して戦闘に加わっていましたが、最近では戦闘の方針をめぐってロシア国防省との対立が深まっていました。ロシア国内でいったい何が起きているのか、今回の“反乱”について時系列でまとめました。(※日時は現時時間)

■23日 プリゴジン氏「軍の指導者の悪事を止めなければ」

プリゴジン氏は23日、「(ロシア軍)はワグネルを壊滅させるためにあらゆることをしている」などと、ロシア軍が自らの部隊を攻撃していると訴えた上で「軍の指導者の悪事を止めなければならない」と述べました。

■24日 ロシア連邦保安局が捜査を開始、モスクワは厳戒態勢

FSB=ロシア連邦保安局は、プリゴジン氏が「武装蜂起を呼びかけた」として捜査を開始しました。プリゴジン氏の声明が発表された後、モスクワなどでは警備が強化され、軍用車両が目撃されるなど、緊張感が高まっています。

■24日 「ワグネル」が南部の町ロストフナドヌーに

ロイター通信によりますとプリゴジン氏は「ロシア軍に対し全力で対抗する準備ができている」と明らかにした上で、すでに配下の戦闘員がロシア南部の町、ロストフナドヌーに入ったと主張しました。ロストフナドヌーはウクライナ国境に近いロシア軍の拠点で、アメリカの戦争研究所はウクライナ侵攻の戦況に「重要な影響を与える」と分析しています。

■24日 米ホワイトハウス「状況を注視」

アメリカのホワイトハウスはロシア国内の混乱について「状況を注視している。今後、同盟国などと協議していく」とコメントしました。

■24日 「ワグネル」がロストフナドヌーを統制下に

プリゴジン氏はロシア南部の主要都市、ロストフナドヌーにある空港と軍事施設を自らの部隊が掌握したとのメッセージをSNSに投稿しました。プリゴジン氏はまた「(ロシア軍の)南部軍管区司令部に入った」としてロストフナドヌーを事実上、統制下に置いたと強調しています。

■24日 「ワグネル」がモスクワに向かい北上か

ロイター通信はロシア当局者の情報として、ワグネルの戦闘員がモスクワから南に約500キロに位置する都市・ボロネジの軍事施設を支配下に置いたと伝えました。ワグネルの部隊がロストフナドヌーからモスクワに向かい北上をはじめた可能性があります。またボロネジ近郊でロシア軍のヘリコプターがワグネルの部隊に攻撃を加えたほか、AP通信はボロネジで石油貯蔵施設が炎上していると報じました。

■24日 プーチン大統領「裏切りに直面している」

ロシアのプーチン大統領はテレビ演説で、「我々は裏切りに直面している」「ロストフナドヌーの状況を安定させるために徹底的な行動をおこす」と述べました。また、ワグネルの行動を「反乱」だと非難した上で、徹底して抑え込む姿勢を強調しました。

■24日 ゼレンスキー大統領「隠しきれないほどの混乱」

ロイター通信によりますと、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアでは隠しきれないほどの混乱が起きている」「ロシアが軍隊や傭兵をウクライナに長く駐留させればさせるほど、後々、より多くの問題を抱えることになる」とコメントしました。

■24日 G7外相が電話会合

G7外相が電話会合を行い、ロシア情勢を含む国際社会が直面する喫緊の課題について、引き続き緊密に連携していくことで一致しました。

■24日 英政府「さらなる動乱のおそれ」

イギリス政府は「ロシア全土でさらなる動乱が起きる恐れがある」としてロシアへの渡航を控えるよう改めて勧告しました。

■24日 ベラルーシ外務省が「ワグネル」の“進軍停止”を発表

ベラルーシ外務省はプリゴジン氏が部隊の移動を停止することに同意したと発表しました。ベラルーシのルカシェンコ大統領がプリゴジン氏と電話で会談し、交渉を行ったということです。プリゴジン氏は示された仲介案に合意し、ベラルーシに移動するということです。

■24日 プリゴジン氏「部隊を引き返す」

プリゴジン氏は、声明で「この24時間でモスクワまで200キロの距離に迫ったが、一滴の血も流していない。ただ、流血の可能性が出てきたため部隊を引き返す」と述べ、流血の事態を避けるためモスクワへの進軍を停止すると表明しました。

■24日 ロシア大統領府「罪は問わない」

ロシア大統領府は、プリゴジン氏への捜査を中止し、反乱に加わったワグネルの戦闘員についても罪は問わないとしているということです。

■24日 ゼレンスキー大統領「クレムリンの男は恐怖に陥り身を隠している」

ゼレンスキー大統領はビデオ声明を公開し、「ロシアの統治者たちが何もコントロールできていないことが世界中に示された。完全なる混乱だ」と述べました。さらに、「クレムリンの男は恐怖に陥り、どこかに身を隠している。その恐怖は彼自身が作り出したものだ」と述べ、プーチン大統領が自ら引き起こした脅威に怯えていると強調しました。

■24日 「ワグネル」が撤収開始

プリゴジン氏をはじめとする「ワグネル」が、占拠していたロストフナドヌーから撤収を始めました。プリゴジン氏がSNSに公開した映像には、撤退の際、市民の歓声が上がる中で自撮りに応じる様子も映されています。

■ プーチン大統領24時間前に兆候把握か ワシントンポスト紙

アメリカの有力紙ワシントンポストは情報機関の分析として、プーチン大統領が少なくとも24時間前には反乱の兆候を把握していた可能性があると報じました。事前に阻止できなかった背景に政権上層部での足並みの乱れや内部対立があることをうかがわせるとする、アメリカ政府当局者の見方も伝えています。

■ 米戦争研「士気を確実に低下させるだろう」

アメリカの戦争研究所はワグネルがモスクワにむけ急速に北上したことについて「ウクライナでのロシア軍の大きな損害が理由とみられ、国内の治安上の弱点を浮き彫りにした」と指摘しています。そのうえで、今回の事態は「多くの地域でのロシア軍の予備戦力の不足を明らかにし、ウクライナにいるロシア軍兵士の士気をほぼ確実に低下させるだろう」としています。

また、今回の反乱でロシア軍の輸送機1機とヘリコプター7機がワグネルによって撃墜された可能性があり、ロシア空軍にとってウクライナ侵攻開始以来、1日の損害としては最大級だと分析しています。

■25日 中国政府が“ロシアを支持”の声明

中国外務省は声明を発表し、ワグネルの反乱とその後の展開について「これはロシアの内政だ」とした上で「ロシアが国の安定を守り発展と繁栄を実現することを支持する」と表明しました。声明はワグネルによる反乱がほぼ収束したタイミングで出された上、中国語で約50文字にとどめるなど中国政府は静観する姿勢であることが覗えます。

■25日 米ブリンケン国務長官 ロシア国内に「亀裂」

アメリカのブリンケン国務長官はテレビ番組で「明らかに(ロシア国内に)亀裂が生じているのだと思う。それがどうなるのか、何か起こるとしていつなのか予測は難しいし推測もしないが、我々は最終的な動きをまだ見ていないと思う」などと述べました。またワグネルによる反乱は「ロシアの内政問題だ」としつつも、プーチン大統領の権威やウクライナ侵攻の前提に疑問を投げかけたと指摘しました。

■25日 ロシア・ベラルーシ首脳が電話会談

ベラルーシ大統領府はルカシェンコ大統領とプーチン大統領が、電話で会談したと発表しました。

■25日 プリゴジン氏が「所在不明」

ロイター通信は25日の時点でプリゴジン氏の「所在がわからない」と報じました。またAP通信は、プリゴジン氏がこれまで頻繁に行っていたSNSなどでの情報発信が途絶えたことを「らしくない静かさ」だと指摘しています。プリゴジン氏は24日夜にロシア南部のロストフナドヌーを離れ、ベラルーシに出国するとされていますが、日本時間26日午後5時現在、到着したとの情報はありません。

■26日 「ワグネル」幹部が脅迫されていたか 英メディア

イギリスメディアは、イギリス治安当局筋の情報として、撤収の前にプリゴジン氏ら「ワグネル」幹部がロシアの諜報員から脅迫されていたと報じました。

■26日 「捜査まだ中止していない」 露メディア

ロシアメディアは今回の反乱について「プリゴジン氏への捜査はまだ中止してない」と伝えました。

■26日 プリゴジン氏が音声メッセージを公開

プリゴジン氏が2日ぶりに音声メッセージを公開しました。「私たちは抗議するために行動を起こしたのであって政権転覆を狙ったわけではない」などと述べ、ワグネル解体の動きとウクライナ侵攻で過ちを犯した人々への抗議が目的だったと語りました。対立するショイグ国防相らを念頭においた発言とみられます。一方で、撤収した理由については仲介に入ったベラルーシのルカシェンコ大統領から、ワグネルが合法的に活動できる方策についての提案があったためだと述べました。ただ具体的な内容には触れていません。プリゴジン氏はベラルーシに向かうとさていますが、現在の居場所については明らかにしていません。

■26日 プーチン大統領「国を裏切った」

プーチン大統領が国営放送で急きょメッセージを放送。「反乱の首謀者たちは、祖国を、国民を裏切り、犯罪に引きずり込んだ人々をも裏切った」と述べ、民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏を名指しこそしなかったものの「反乱の首謀者は国を裏切った」と厳しく非難しました。一方で、最終的にはワグネルが「流血」という選択をしなかったことは「正しい判断だ」とし、兵士らに対しては感謝を述べました。その上で改めてロシアの団結を求めました。

■26日 米バイデン大統領「我々は関与していない」

アメリカのバイデン大統領はプリゴジン氏の反乱について初めて言及し、「我々は、プーチン氏に今回の件で、西側やNATOを責める言い訳を与えないことで一致した。我々は、関与していないことを明確にした。これはロシア体制内の闘争の一部だ」などと述べ、アメリカや同盟国は反乱に関与していないと強調しました。一方、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官はアメリカが関与していないことを外交ルートを通じてロシア側に伝えたことを明らかにしました。

■27日 「反乱」の捜査取りやめ ロシアメディア

ロシアメディアによりますと、ロシア当局が、ワグネルが起こした反乱について、刑事事件としての捜査を取りやめたということです。

■27日 プリゴジン氏がベラルーシに

ベラルーシの国営メディアは、ルカシェンコ大統領がプリゴジン氏はベラルーシにいると明らかにしたと報じました。ルカシェンコ大統領は、またワグネルの戦闘員についても受け入れる用意があるとの考えを示したうえで戦闘の経験についてワグネルから学ぶものがあるとのべました。

■27日 プーチン大統領 「ワグネル」は国費運営と明らかに

プーチン大統領は、非合法組織であるワグネルが国費で運営されていたと明らかにしました。その額は、1年間でおよそ1450億円だったということです。さらに、プリゴジン氏が軍への食料品納入などで約1350億円を受けとっていたと明らかにし「何も盗んでいないことを祈る」とのべました。ロイター通信によりますとプーチン大統領はワグネルとプリゴジン氏に支払われた金について調査する意向を示したということです。