プラダ中国女優と契約解消 代理母出産騒動
■人気女優が代理母出産で騒動
プラダは19日、中国人の若手人気女優・鄭爽(てい・そう)さん(29)との契約を解消したことを明らかにした。鄭さんは人気ドラマや娯楽番組に出演するなど「国民的」とも言える女優で、プラダが中国でのキャンペーンに起用していた。
契約解消の理由をプラダは詳しく明らかにしていないが、鄭さんには海外で代理出産した子供2人がいて、パートナーとの破局後に養育を放棄したという疑惑が浮上していて、このことが影響したとみられている。
中国では元々、代理母出産は2001年から禁じられている。しかし、一部の富裕層が海外で大金を払って代理出産をするケースがあるとメディアで取り上げられ、ネット上で批判の声も上がるなどしていた。
こうしたなか、人気女優の鄭さんが代理母出産をしたのではないかという疑惑が浮上したのだ。
■疑惑浮上は元恋人の投稿がきっかけ
疑惑浮上のきっかけは、鄭さんの元恋人によるSNSへの投稿。「1年以上アメリカに滞在している」「理由は2人の幼い命の世話をしなければいけないからだ」
この投稿により、鄭さんに子供がいるとの噂がネット上で広がった。その後、中国メディアがアメリカの出産証明書を入手、2019年と2020年に生まれた2人の子供の母親の名前が、鄭さんとなっていたことが明らかになった。
この2年間、鄭さんはテレビ番組などで普段通りの姿をみせていたことから、代理母出産の可能性が取りざたされた。
■音声データに「もう中絶はできない」
さらに、中国メディアは、鄭さんが家族らとの間で交した会話だとする音声テープを報じた。テープには、鄭さんとみられる女性が「子供はもう中絶はできない」と語る様子や、鄭さんの父親とされる男性が、「病院に行って(子供を)捨てればよい」といった言葉などが録音されていた。
この報道を受けてネット上で、「人間失格だ」などと多くの批判が噴出し、大きな騒動となった。
■政府も厳しい措置
中国当局も今回の騒動を受けて動いた。司法などを管轄する中国共産党中央政法委員会は、「中国で代理母出産が禁止されているからといって、法律の穴を利用してアメリカに行くことは、決して法律を尊重していることではない」と批判。さらに、テレビなどを管轄する当局は、鄭さんのメディア露出を中止するよう指示を出した。事実上の“追放処分”だ。
■本人は違法な行動を否定
プラダから契約を解消された鄭さん本人は19日、SNSウェイボーで声明を発表し、「中国本土で違法な指示を出したことはない。海外でも私はすべての法律を尊重している」とした。
ただし、代理母出産をしたのかどうかなどについての明確な説明はなかった。
中国では、貧富の差が大きな課題となるなか、一部の富裕層が特権的な振る舞いをすることに政府も敏感になっている。
人気女優の騒動はこうした背景が重なり、中国社会に大きな波紋を広げる結果となっている。
■写真:鄭爽さんウェイボーより