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アフガン“女性向けTV局”元キャスターは

2021年10月2日 13:21

アフガニスタンで2017年に設立された“女性による女性のためのテレビ局”「ZanTV」は、タリバンのカブール制圧後に放送を休止。多くの職員が国外退避を余儀なくされました。女性の声を伝え続けた元キャスターの女性が直面した現実とは。

■「ZanTV」…女性による女性のためのテレビ局

ZanTVのZanとは、女性という意味です。2017年にZanTVができた時、私は別のテレビ局で働いていましたが、女性による女性のためのテレビ局という理念にひかれて、ここで働くことを決めました。特に力を入れて取材していたのは、未成年の強制結婚や、出産をめぐる問題です。パンジシール州では、病院や医師が不足していて、若くして結婚した女の子たちが安心して子どもを産むことができませんでした。出産時に、命を落とすこともありました。私が現状を伝えたことで、その後、産科の病院が建設されました。女性たちの問題を、私たち女性の力で伝えてきたのです。

■常に危険と隣り合わせ…脅迫も

アフガンで女性がジャーナリストとして活動していくことは、常に危険と隣り合わせです。タリバンや保守的な男性たちから、脅迫を受けることもありました。そのため、身を守るために、出勤する時や帰宅する時には、ルートを毎日変えるなど、気をつけていました。私がある政治家の問題について報道した際には、家族も脅迫されました。そのため、父親から、「いつか大変な目にあう」と、ジャーナリストの仕事をやめるように言われたこともあります。テロの現場を取材した際に、タリバンが私たちに取材をやめさせるために、耳元で発砲したこともありました。

■タリバンのカブール制圧で「全てが終わってしまう」

タリバンがカブールを制圧した日、私は取材に出かけていました。突然、母親から電話があり、「タリバンがカブールに入ってきたから、家に帰ってきなさい」と言われ、怖くなって家に戻りました。タリバンの暗黒時代に戻ってしまうのかと、不安と絶望しかありませんでした。私は、ジャーナリストとして、女性の声を伝え続けるという自分の夢を実現するために、多くの時間とお金を費やしてきましたが、全てが終わってしまうと思いました。

その後は、数日間、家から出ずに過ごしていました。タリバン政権では自由も、国の発展もない、生きていけない、と思い、国を出る決断をしました。私は、これまで、タリバンについても報道していましたし、キャスターとして名前も顔も知られていたので、殺される可能性があるとも思っていました。幸いにも、カナダ政府の支援を受けることができ、最後の輸送機で、アフガンを出ることができました。

■タリバンはいずれ本当の顔を見せる

タリバンの考え方は、20年前と変わっていません。彼らの政策をみていると、やはり女性の自由を認めていないのです。いまは国際社会からの支援を得るために、変化をアピールしていますが、いずれ、残虐で暴力的な、本当の顔を見せると思います。

(NNNバンコク支局 平山晃一)

「アフガンからの声#9」

*写真:元キャスターのハリーダ・ラシードさん(24) ZanTVのYouTubeより