「性的関係」告白の中国選手、近影公開ナゼ
中国の著名なテニス選手、彭帥(ホウ・スイ)さんがSNSで、前副首相から性的関係を強要されたと告白しました。その後3週間も連絡が取れなくなったとされ、海外の報道も遮断されていますが、突如、近況の動画が相次いで公開されました。政府の狙いとは?
■中国選手、バッハ会長に「安全」
IOCのホームページには、バッハ会長と笑顔でテレビ電話をする女性の映像がアップされています。女性は中国のテニス選手、彭帥(ホウスイ)さん(35)。IOCの発表によると、ホウスイさんは「今は、プライバシーが尊重されることを望んでいます」と話しています。
約30分間の通話の中で、ホウスイさんは「北京市内の自宅で暮らしていて安全だ」などと語りました。またバッハ会長から来年1月、北京市内での夕食に誘われると、受け入れたといいます。
ホウスイさんの投稿とみられる文書では「私たちは性的な関係を持ったことがあった」とありました。
かつて中国の最高指導部のメンバーだった張高麗(チョウコウレイ)前副首相から、性的関係を強要されたことなどをSNS上で告白。その後、連絡が取れなくなったとされていました。
■共産党系メディアが「動画」公開
北京市内でアメリカ・CNNの放送を見ていると、ホウスイさんのニュースが始まった途端、画面が消えました。内容によって部分的に、海外の報道が遮断されていました。
北京市民に聞くと、「誰に性的暴行をされたの? なぜ中国国内では報道されないんですか?」という疑問の声や、「政府メディアの発表を待つべきです。中国メディアは海外メディアより信頼性が高いので」という意見もありました。
ホウスイさんと連絡が取れなくなってから約3週間。ここに来て、中国側からホウスイさんの近況とみられる映像が相次いで公開されました。
21日、ホウスイさんが北京で行われた青少年向けテニスイベントに出席したとされる映像では、「テニスダブルス世界一のホウスイさん、どうぞ!」というアナウンスの声が収まっていました。別の動画では、にこやかにサインに応じる様子も映っていました。
これらの動画はツイッターで、中国・共産党系メディア「環球時報」の編集長や記者が公開したものです。
■日付強調、張り紙を撮影…不可解さも
動画公開から約5時間後、日本テレビの記者が、ホウスイさんがイベントに参加したとされる会場を訪ねました。周りには人気(ひとけ)がなく、特段警備を強化してはいませんでした。
会場内では実際に子どもたちがテニスをしていましたが、ホウスイさんの姿は確認できませんでした。
さらに20日には、コーチらと食事をする様子の動画がツイッターで公開されました。映像では「明日が11月20日でしょう」「21日」「明日は21日だね」「そうそう、21日」と、日付が強調されていました。さらに、「消毒を11月に行った」という、一見撮影する必要を感じない張り紙の映像もありました。
映像の翌日の21日、このレストランを訪ねました。北京中心部にある人気店で、動画ではホウスイさんが入り口付近でカメラに気付き、笑顔を見せる様子が映っていました。
店長にホウスイさんの姿を見たかを聞くと、「分からない、本当に何も分からない。聞かないでください」と慌てたように回答を避けました。
■動画公開「狙い」「次の一手」は?
相次ぐ映像公開の狙いについて、現代中国に詳しい神田外語大学の興梠一郎教授は「動画を出すことで『元気だよ』というメッセージを伝えているつもりです。『もう報道しないでください』という意味です。これは全部、政府主導でやっていますね」と言います。
22日、ホウスイさんについて問われた中国外務省の報道官は「最近、彼女がいくつかのイベントに出席したのをあなたも見たでしょう。次の質問をどうぞ」とだけ答えました。
中国側の次の一手はあるのでしょうか。興梠教授は「この問題はおそらくここで終わりでしょうね。これでもまだみんなが納得しないとなると、(テレビで)『プライバシーを尊重していただきたい』『静かにしていただきたいです』など、本人が出てきてしゃべる(ことも考えられる)」と分析しています。
(11月22日『news zero』より)