中国選手、バッハ会長と「テレビ電話」ナゼ
中国の前副首相から性的関係を迫られたと告白した同国のテニス選手、彭帥(ホウ・スイ)さん。安否が心配された中、なぜ、テレビ電話でIOCのバッハ会長と会談したのでしょうか。一方で女子テニス協会は、調査の徹底を求めて追及。その背景を考えます。
■バッハ会長と習主席「思惑」は
有働由美子キャスター
「(告白後に連絡が取れなくなっていたとされる)ホウスイさんの姿が見られて良かったと思いますが、なぜ突然、バッハ会長とテレビ電話をしたのでしょうか?」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「それは、この問題が北京オリンピックに影響するのをなんとか食い止めたいからです。そう考えているのは、バッハ会長と習近平主席。五輪開催に向けて、2人は2015年から何度か会談しています。2人とも、北京五輪を大成功に導きたい」
「ところが今、アメリカだけでなくイギリス・カナダ・オーストラリアなども中国の人権問題を理由に、大会に政府関係者を派遣しない『外交的ボイコット』を検討しているようです。今回のホウスイさんの問題が、追い打ちになりかねません」
「習主席もバッハ会長も、外交的ボイコットは嫌で、批判を浴びる中での開催は傷がつくので避けたい。2人の思惑は一致しているわけです」
■WTA「開催見送りも」…調査要求
有働キャスター
「一方で、ホウスイさんが本当に自由な状況にいるのかは分かりません」
小野委員
「そのことを最も厳しく追及しているのが、女子テニス界を統括するWTA(女子テニス協会)のサイモンCEOです」
「『ホウスイさんの身の安全に関する説明や、告発に対する調査をしっかり行わなければ、中国での大会開催を見送ることも考える』と述べています。大会の開催は巨額の利益を生むはずですが、『こちらの問題の方が重大だ』と話しています」
「バッハ会長がテレビ電話をしようが、WTAは『調査を求める考えに変わりはない』としています」
■「人権問題」敏感に…選手ら声上げる
小野委員
「(厳しい目を向ける)背景には、大坂なおみ選手らが『抑圧は許されない』などと、次々と声を上げたことによります。今、スポーツ界では特に人権問題で選手自らが声を上げるようになっています。組織のトップも、こうした問題に敏感になっていると言えそうです」
「中京大学スポーツ科学部の來田享子教授は『WTAが本来、選手の統括をする団体なのに、IOCが対応していることへの不自然さや違和感への抗議の意味もあるのではないか』と指摘しています」
有働キャスター
「五輪が大切にしていることに、アスリートファーストがあります。例えば、『ホウスイ選手が自由に発言できているな』と分かって、『それなら大丈夫だよね』と誰もが思えるような発信があると良いのですが…」
(11月22日『news zero』より)