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空爆と民間犠牲の実態とは?

2021年11月24日 22:56

世界各地の紛争の現場では、空爆によって、子どもを含む多くの民間人が巻き込まれ、犠牲になっている実態がある。無人機などの普及により、攻撃する側のリスクは減少する一方、攻撃される側の市民が巻き込まれるリスクを減らすことはできるのだろうか。(国際部・内山瑞貴)

▼空爆の種類や方法

「空爆」とひとことで言っても上空から爆弾を自由落下させるものや、落下しながら決められた標的に軌道修正していくものなど様々な種類がある。また空爆を行う方法についても、パイロットが操縦する爆撃機から直接爆弾を落とすものや、無人機を遠隔操作して標的に近づき攻撃するものなどがあり、中でも無人機による攻撃は近年、アメリカ軍などを中心に多用されるようになっている。

また、空爆の主な目的は、敵対勢力の指導者の暗殺・敵対勢力を支える軍事基地やインフラ基盤を破壊し社会にダメージを与えること、自国への攻撃に対する報復などがある。

■世界の空爆総数は5万件以上

日本のメディア研究機関(GNV)の集計によると、2010年から2019年までに世界で行われた空爆の総数は、把握されているものだけで5万3726件にのぼる。この数字はあくまでも把握されているものだけで、空爆を行う国は年間の空爆件数を公表していないケースが多いため、実際の空爆数はさらに多いことが予想される。

また、この期間に空爆を行った国は、サウジアラビアとUAEの連合、欧米諸国の連合、ロシアとシリアによる連合が全体の8割以上を占め、空爆された国はシリア、イエメン、イラク、アフガニスタンの4カ国だけで9割を占めている。

▼巻き込まれる民間人

空爆は必ずしも狙った対象者だけでなく、民間人や無関係の人を巻き込んでしまう危険性をはらんでいる。

例えば、中東イエメンはサウジアラビアの連合軍による空爆の被害を受け続けている。AP通信によると、2015年以降、イエメンでは確認されているだけで1万8000人以上の一般市民が空爆で死傷したほか、多くの病院や学校、井戸やインフラなどが破壊された。国連は、2021年中にイエメンで40万人の子どもが飢餓で死亡する危険があるとして「世界最悪の人道危機」だと訴えている。

サウジアラビア連合軍は、スクールバスや学校が爆破され子どもが死亡しても、誤爆とは認めず、「正規の標的」を狙ったと主張している。

また、今年8月、アフガニスタンで撤退を進めていたアメリカ軍が過激派組織「イスラム国」の地域組織を狙ってカブール市内で空爆を行い、その結果、子ども7人を含む民間人10人が死亡した。

アメリカ軍はのちに、間違った情報に基づく誤爆だったと認め謝罪した。

■軍が情報隠蔽も

さらに、民間人の犠牲が全て公になっているわけではない。ニューヨークタイムズは、今月アメリカ軍がおととし、シリア東部で行った空爆によって子どもや女性を含む民間人80人が死亡したにもかかわらず、軍内部で情報が隠蔽(いんぺい)されてきたと報じた。

イギリスのNGO(Action on Armed Violence)の報告書によると、2011年から2020年までの10年間で空爆によって死傷した8万3964人のうち半数以上の56%(4万6888人)が民間人だったという。中でも、シリアやイエメンでは死傷者の8割近くが民間人と、直接戦闘に関わっていない多くの人々が犠牲となっている現状がうかがえる。

空爆は、攻撃する側が「過激派」や「テロ組織」を狙ったものだと発表していても、実際には、子ども含む民間人が犠牲となるケースが多いのが実情だ。無人機などの普及で攻撃する側のリスクは減っている一方、攻撃される側の市民が巻き込まれるリスクをどのように減らすことができるのか。国際社会には大きな問いが突きつけられている。