×

“陸自車両”がロシアに流出、ウクライナ侵攻に投入か?――実態を取材 業者から転売か…解体業者「売り払ったらそこまで」

2023年11月25日 11:50
“陸自車両”がロシアに流出、ウクライナ侵攻に投入か?――実態を取材 業者から転売か…解体業者「売り払ったらそこまで」

陸上自衛隊で幅広く使われている「高機動車」が流出し、ロシア軍のウクライナ侵攻に使われている疑いが浮上しました。取材を進めると、この車両は国内でも確認できました。落札したことのある解体業者からはある証言も。防衛省は調査に乗り出しました。

■ロシア軍の映像に陸自の車両が?

SNSに投稿された、ウクライナに侵攻するロシア軍の映像。10月23日に撮影されたものですが、問題は、映り込んでいたある車両です。日本の陸上自衛隊が使っていた「高機動車」ではないかという疑惑が浮上しています。

高機動車は優れた走行性能を誇り、陸上自衛隊で幅広く使われています。実際の写真とロシア軍の映像を比べてみると、確かによく似ています。

老朽化した高機動車は処分の際、民間の解体業者によって鉄くずにすることが義務付けられていますが、密かに転売され、ロシア軍のウクライナ侵攻に使われている疑いが持たれています。防衛省も調査に乗り出しています。

■元隊員と確認…高機動車の特徴とは

取材を進めると、自衛隊から流出したとみられる高機動車が国内にもあることが分かりました。関東某所で所有者の許可を得て、実際に高機動車に乗ったことがある元陸上自衛隊員と車両を確認しました。

元陸自隊員は、車両のさまざまな箇所をチェックし、こう指摘しました。

「これは明らかに高機動車の特徴ですね。ここに書いてあるのが部隊番号です。元々所属していた部隊の名前が書いてあります。22普通科連隊という部隊(です)」

「こちらはけん引用のフックを掛ける場所ですね。ヘリコプター等で空輸する際にも、ここがけん引する場所になります」

戦闘で使うことを想定した、一般車両にはない装備の数々。車内に入ると、「高機動車用ほろ」という決定的な表記がありました。そこに並んで、あるマークも見えました。

元陸自隊員
「これは防衛省に納入された品であるということを示すマークですね。こちらの、桜にWマークというのが『官品』を示しています」

この車両はフレームの一部が切断されていたものの、問題なく走行できる状態でした。

■ロシア人所有者「購入先覚えていない」

高機動車は本当にロシアに流出しているのでしょうか。ロシアで高機動車とみられる車を所有するという男性を10月に訪ねました。その車両はボンネットにフックが付き、日本国内で見つかった高機動車の特徴と一致します。

――これは日本の自衛隊の車ですか?

ロシア人所有者
「なんとも言えません。知りません」

男性は、購入先や価格は覚えていないと話しました。

■流出の経緯は?…解体業者が証言

鉄くずにされているはずの高機動車は、どうやって流出したのでしょうか。高機動車を落札したことがある解体業者はこう話します。

「提出義務がある解体写真などの書類がそろっていなくても求められることはなく、適切に処理したかを確認されることもなかった。自衛隊は民間に売り払ったらそこまで、という感じだった」

解体されることなく、業者から転売されたとみられる高機動車。解体業者の証言によると、その後バラバラに分解してロシアに持ち込まれ、組み立て直されたものとみられています。

転売できてしまう状況が長らく放置されてきた実態があったようです。防衛省も調査を進めていて、再発防止策を年内に公表するとしています。

(11月24日『news zero』より)