ロシアで進む深刻な少子化に危機感 「産めよ増やせよ」プーチン氏大号令
少子化に危機感を強めるロシアのプーチン大統領は、「産めよ増やせよ」の大号令をかけ、思想統制も強めています。そんなプーチン氏が理想とするロシアの“伝統的大家族”を取材しました。
先月、私たちはロシア極東サハ共和国へ。シベリアの極寒の地で暮らす、ある家族の家を訪ねました。
パべルさん(54)とタチアナさん(49)夫婦に家族を紹介してもらいました。母親のタチアナさんは14人の子どもを出産していて、一家はロシアでも屈指の子だくさん家族なのです。食卓はいつもにぎやかで、娘たちが準備を手伝います。
タチアナさん
「娘がたくさんいるので、とても助かります」
この日のメニューは、鹿肉を使ったピラフです。
四男・アレクサンドルさん(19)
「お母さんの料理が大好きです」
別々に暮らす子どもたちも週末には実家に集まり、家族の時間を過ごすといいます。
タチアナさん
「大家族はみんなで助け合うので、勤勉な子どもが育ちます」
夫婦は、政府から授与された勲章を見せてくれました。2018年には、理想的な大家族として、プーチン大統領から直接、勲章を授与されました。
さらにタチアナさんには去年、10人以上の子どもを持つ女性を英雄としてたたえる、「マザーヒロイン」の称号も与えられました。
タチアナさん
「マザーヒロインの称号は私にとって最高の栄誉です。私は大家族の中で育ちました。それ以外の人生は考えられません」
◇◇◇
2022年、プーチン大統領は旧ソ連時代の「マザーヒロイン」の称号を復活させました。
プーチン大統領(今年9月)
「かつてロシアの家族には子どもが10人近くいたように、多くの子どもを持つことを当たり前にする必要がある」
伝統的な大家族こそが、国のあるべき姿だと訴え、まさに産めよ増やせよの大号令をかけているのです。
モスクワの街中では大家族を推奨する広告キャンペーンも行われていました。プーチン政権は3人以上の子どもがいる家庭を「大家族」と認定し、税金の優遇など様々な支援を打ち出しています。
こうした動きのワケは、人口およそ1億4000万人のロシアで進む深刻な少子化。2014年以降、生まれる子どもの数は減少の一途をたどっていて、ウクライナ侵攻後大勢の若者が国を出たことも拍車をかけたとみられています。
こうした中、思想統制の動きも――
先月、ロシアの国会ではある注目の法案が審議されていました。
下院議長
「欧米が押しつける出産拒否のイデオロギーは、女性が子どもを産まなくなることにつながるでしょう」
子どもを持たない「チャイルドフリー」の価値観をめぐり、その宣伝を禁止する法律が成立したのです。
街の女性に話を聞いてみると――
医師の女性(30)
「とてもよい法律です。私たちはロシアの精神に沿って子どもを産む必要があります」
会社員の女性(20)
「(出生数の低下は)国の状況がとても厳しいからでしょう。将来が心配なんです」
出生数の回復を最重要課題と位置づけるプーチン大統領。妊娠中絶の規制を強める動きもみられるなど、女性の権利に対する懸念も広がっています。