【タリバン復権】アフガニスタンの女性「ろう獄にいるようだ」との嘆きも
8月、アフガニスタンの首都カブールで行われた女性たちによる抗議デモ。権利を訴えて歩く女性たちの前には棒のようなもので威嚇するタリバン戦闘員の男。すると突然、戦闘員の男らが空に向かって発砲、デモを無理やり解散させた。
抗議や批判も許さず、女性への抑圧を強めるタリバン。地元のテレビ局では、女性キャスターはマスクをしたまま原稿を読んでいる。マスクはコロナ対策ではなく顔を隠すようにとのタリバンからの“命令”によるもの。メディアへの圧力も強まり、女性キャスターが出演を続けられるテレビ局は数少なくなっている。
「前の政権が崩壊してタリバンが復活し、全てが変わってしまった」
キャスターのターミナ・ウスマニさんは、女性がやっと手に入れた権利が失われたと嘆く。
1996年にアフガンで政権を握ったタリバンは、極端なイスラム法の解釈をもとに全身を覆うブルカの着用を強制。就労や教育を禁止するなど、女性たちにとっては“暗黒時代”となった。
2001年、最初のタリバン政権が崩壊すると女性たちは抑圧から解放され、学校には、男性と一緒に学ぶ女性の姿もみられるように。しかし、去年、タリバンが復権。暗黒時代に逆戻りするかのようにさまざまな権利を奪われていく女性たち。女性が写る看板の設置は禁止され、目以外の顔を出すことも禁じられた。女性だけでは、遠出すらできない。タリバン側は、こうした命令について「女性を守るもの」だと一方的に主張。
また、女子教育についても厳しい考えが。4人の息子と4人の娘がいる38歳の戦闘員は、「娘たちは、もし勉強したいというならコーラン(イスラム教の聖典)を勉強するべきだし、それで十分だ。(宗教学校に行く以外)外出はダメだ」といい、娘に教育は必要ないと話す。
実は、女性の権利を軽視するようなタリバンの価値観は、アフガン社会全体にいまだ根強く残る考えだという。タリバン復権後、女子教育の環境も悪化。“男女別学”を条件に大学には女子学生の姿が戻るも、多くの教員が国外に脱出し、十分な講義を受けられていない。
“大学生活は悪夢に変わった”と話すカブール大学に通う23歳の女子学生。頭などを覆う布、ヒジャブから靴下にいたるまで全身黒い服装を強いられるように。「人間にとっての最大の罰は自由を奪われること。自分のことなのに、自分で決められない。まるで“ろう獄”にいるような気分」と話す。
寮では音楽を聴くことも禁止、男性のいる場所を歩けないなどの様々な制約が課され、やむなく大学を去る女子学生も増えているという。
さらに深刻なのは、中等教育の現場。日本の中学生や高校生にあたる女子生徒たちは、学校に通うことすら許されていない。カブールに住む12歳のスーサンさんは、父親が日本に留学していたため、6歳から8歳まで日本の小学校に通っていた。4年前アフガンに戻ってきたが、タリバンが復権した去年、生活が一変。
スーサンさんの母・ラジアさんもまた、20年以上前、タリバンによって“看護師になる夢”を奪われていた。
「以前のタリバンは人々を殺しました。彼らは、私の家に押し入り、兄弟を連れて行きました」
軍で働いていた兄弟がタリバンに拘束され、家族で国外に逃れたという母・ラジアさん。その後、学校に通えず、看護師になる夢はあきらめざるを得なかったという。母・ラジアさんは「同じ年頃の娘にそんな思いをしてほしくない」と話す。
タリバンの復権後、学校に通えなくなり、ほとんどの時間を家で過ごしているスーサンさん。それでも、母親の思いを胸に、自宅で勉強を続けている。
「母の夢でもあった、看護師になるという夢を絶対に実現したい」
タリバンの抑圧で追い詰められても、仕事や学びをあきらめないアフガンの女性たち。不確かな未来に立ち向かおうとしている。
※詳しくは動画をご覧ください。(2022年9月27日放送「news every.」より)