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【トルコ大使に聞く】ロシアとどう向きあう? 停戦交渉の行方は?

2022年12月2日 13:53
【トルコ大使に聞く】ロシアとどう向きあう? 停戦交渉の行方は?

ウクライナとトルコの穀物輸出合意を仲介するなど、国際社会で独自の存在感を示すトルコ。駐日大使のコルクット・ギュンゲン氏が日本テレビのインタビューに応じ、ロシアとウクライナの停戦交渉を念頭に「ロシアとの関係を維持する」と強調しました。

──トルコは、ロシアのウクライナ侵攻をめぐりどのような立場をとっているのでしょうか。

トルコの立場は一貫しています。ウクライナの国土の統一性が著しく侵害されていることを最も懸念しており、到底容認することはできません。特に(2014年にロシアが併合した)クリミア半島については、歴史を通して深い縁があります。トルコにとって、クリミア半島のタタール系住民の権利は非常に重要です。

──ウクライナとロシアの穀物輸出合意を仲介してきたトルコの動きについて、世界中が注目しています。

トルコは、世界的に影響を及ぼしているこの紛争がいち早く止まることを切に願っており、両国との接触を維持して交渉の開始を促しています。その過程で、トルコの努力の末にウクライナの穀物が世界に届くようになりました。

──トルコはなぜ両国の仲介になれるのでしょうか。

トルコと両国は歴史的に大変深いつながりがあり、隣人としての関係性もあります。トルコが両国ともチャンネルを持って対話ができるということが、国際社会にとっても意義があるのではないかと思います。

──NATO(=北大西洋条約機構)の加盟国でありながらロシアと対話できるのはなぜなのでしょうか。

トルコとロシアは歴史を通して山あり谷ありの関係を保ってきました。現在においても、様々な要素が融合している複雑な関係にあります。ロシアと考え方が共有できる国際問題ばかりではありませんが、共通の認識やともに行動する意思を持てる問題もあります。トルコとしては、国際社会のためにもロシアとの固定的な関係をなるべく維持して協力を深めるという意思を持っています。

──戦況が膠着(こうちゃく)状態にある中、停戦交渉をどのように主導していくのでしょうか。

トルコのエルドアン大統領は、プーチン大統領ともゼレンスキー大統領とも常に接触して対話を続けており、トルコはこれからも様々なレベルで努力を重ねていきます。また、日本は来年から国連安全保障理事会の非常任理事国になりますが、そういった立場からも日本とトルコで密接に連携していきたいと期待しています。

──一方、トルコがロシアへの経済制裁に加わらないのはなぜなのでしょうか。

トルコはこれまで、国連の枠組みで制定された制裁には参加してきました。しかしいま、ロシアに対する制裁のほとんどが、主要国が主導した一方的なものとなっています。このような一方的な経済制裁は、各国が自らの国益に配慮して制定するもので、期待される効果が得られるのか疑わしい側面もあります。そういった考えのもとでトルコは一方的な経済制裁には参加していません。

──ロシアによるウクライナ侵攻後、NATOをめぐる状況は変化しつつあります。トルコとして、NATOは今後どのような方向に進んでいくべきとお考えですか。

ウクライナの戦争は、NATOがいかに重要な防衛機構であるかということを世界に改めて認識させたと思います。NATO加盟国の中でも、トルコ軍の規模は米国に次いで第2位となっています。加盟から70年間、トルコはいち加盟国として常に責任を持って任務を果たしてきました。これからもそれに変わりはないと断言できると思います。また、近年日本でもNATOへの関心やつながりが高まっていますが、トルコもこうした動きを大変歓迎しています。

――トルコは「テロリストの保護」を理由にフィンランドとスウェーデンのNATO加盟に難色を示していますね。

フィンランドとスウェーデンの両国政府は、PKK(=クルド労働者党 ※)関連組織の活動を許してきました。安全保障機構であるNATOに加盟を希望する国が、すでに加盟している国の安全保障を脅かす組織の活動を許しているのは到底容認できません。しかし、トルコが懸念している諸問題が解決されれば、両国はNATOに加盟できるのではないかと思っています。
(※トルコにおいてクルドの独立を掲げて活動する武装組織)

──トルコのEU加盟をめぐる見通しについては。

トルコのEU加盟については、様々な課題があるという懸念を持っている人たちがいますが、将来的にトルコがそういった課題をすべて克服してEUに加盟することになるだろうという展望を持っています。