アサド独裁政権崩壊で混乱…“墓に放火” 独裁政権の麻薬製造指摘の映像も
アサド政権が崩壊したシリアでは大統領一家の墓に火が放たれるなど、独裁ファミリーに対する報復の動きが続いています。こうした中、国境地帯を訪れるとおびただしい数の人々が足止め状態になっていました。現地で何が起きているのか、取材しました。
◇
12日、私たちが向かったのは、シリアと国境を接するレバノンの検問所。アサド政権の崩壊を受け、「自由!自由!」と言いながら笑顔でシリアに向かう人々が。
女の子3人、男の子2人を連れた母親も、約10年ぶりにシリアへ帰国するといいます。
帰国するシリア人
「(シリアの)自宅は壊されました。電気も水もありません。安全、平等を望みます」
──シリアに行ったら何をしたいですか?
帰国するシリア人
「自分の家を建て直したい」
一方で…
NNNマスナ 平山晃一(12日)
「こちらの場所(マスナ検問所付近)には、シリアのアサド政権崩壊の混乱から逃れようと、多くの人がレバノンに入国するために待っている状況です。もう3日、この状況だということです」
パスポートがないため、レバノンに入国できない人々が。
レバノンへの入国を望むシリア人
「彼ら(反政府勢力)が政権を握ったら虐殺が始まると思います。家族と一緒にレバノンで暮らしたいです」
独裁政権崩壊の後も混乱や報復が続くとの心配から、ふるさとを離れる人も相次いでいるのです。
そのシリア国内。反政府勢力によって撮影されたとされる映像に映る巨大な建物は、アサド前大統領の父、ハフェズ・アサド元大統領の墓がある霊廟(れいびょう)ですが、黒い煙が立ち上っています。
その中では、戦闘員たちが元大統領の墓に火をつけていました。
「神は偉大なり。犯罪者の墓を暴いたぞ」
大理石で造られた豪華な霊廟の内部は、煙が充満しました。
50年以上にわたりシリアを支配してきたアサド一族へ渦巻く怒り。
反政府勢力戦闘員
「神の意志に従い、我々はシリアの全ての道からアサド家とその不正義を取り除く」
政権崩壊で、アサド政権の闇も次々に明るみに。
撮影者
「アサドの弟が所有していた場所だ」
ダマスカス近郊で撮影されたとされる映像に映っていたのは、床に散らばる白い粒状のものや錠剤のようなものも…。
映っていた場所は、アサド政権が製造していた違法薬物の倉庫とみられています。
国際社会から経済制裁を受けていたアサド政権は、違法薬物の闇取引を資金源にしていたと指摘されています。
◇
「アサド後」の変化がシリア各地で進む中、新たな動きを見せたのが、アサド政権の後ろ盾だったロシアです。
12日のロイター通信によると、政権崩壊を主導した反政府勢力の政治部門と直接コンタクトをとったと報じられました。
ロシア側は、シリア国内に抱える2つのロシア軍基地について「国際テロに対抗するため」そのまま使わせてほしいと伝えたということです。
◇
さまざまな思惑が渦巻く新生シリア。人々が望む安定はもたらされるのでしょうか。