世界に波紋「米国がガザ地区を所有する」 トランプ大統領、発言の狙いは?
アメリカのトランプ大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と会談し、その後の会見でパレスチナ自治区ガザ地区を「アメリカが所有する」と発言しました。世界に波紋を広げているこの発言の狙いは、どこにあるのでしょうか。
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5日、パレスチナ自治区ガザ地区で聞かれたのは、トランプ大統領への“批判”の声でした。
ガザ地区の住民
「トランプ大統領は新たな手法で、私たちを追放しようとしています」
ガザ地区の住民
「トランプ大統領の計画は、私たちがここにとどまるので失敗するでしょう」
その理由は、会見で出た次の発言です。
アメリカ トランプ大統領(米・ワシントン 4日)
「アメリカがガザ地区を引き継ぎ、仕事をする。ガザ地区を所有し、危険な不発弾や兵器をすべて取り除く責任を負う。長期的な所有を見据えており、中東の一部もしくは中東全体に大きな安定をもたらすとみている」
4日、イスラエルのネタニヤフ首相を迎えた、トランプ大統領。2度目の就任以来、外国の首脳とホワイトハウスで会談するのは初めてです。
イスラエル ネタニヤフ首相
「トランプ大統領が強い力とリーダーシップを発揮した。感謝する」
ネタニヤフ首相が感謝を述べたワケは、ガザ地区をめぐり先月、イスラエルとイスラム組織ハマスの間で発効された停戦合意。ロイター通信によると停戦はおおむね維持されていて、トランプ大統領は“停戦合意は自身の成果”だと強調していました。
こうした中、トランプ大統領が主張した、アメリカによるガザ地区の“長期的な所有”。
“経済開発”を進めると述べ、ガザ地区の住民全員を、ヨルダンなど別の場所に移住させるべきとの考えも示しました。
──(移住の)規模の想定は?
トランプ大統領
「全員だ。170万~180万人になるだろう」
こうした発言に対し、ネタニヤフ首相は…。
ネタニヤフ首相
「彼は異なる考えを持っていて、注目する価値があると思う。歴史を変える可能性があり、この方法を追求する価値があると思います」
そして、トランプ大統領は“ガザの未来”について…。
トランプ大統領
「ガザ地区に世界中の人々が住むビジョンを描いている。国際的で信じられないような場所になるだろう。ガザの潜在能力は、信じられないほどだ」
また、ガザ地区の安全確保のため、必要であればアメリカ軍を派遣する考えも示しました。
イスラエルと戦闘を行ってきた「ハマス」は早速…。
「ハマス」幹部
「ガザ地区は共有地でも売買可能な不動産でもありません。私たちはトランプ大統領に対し、発言を撤回するように求めます。このような発言は、火に油を注ぐものだからです」
住民の強制移住については、エジプトなど周辺国のみならずドイツやフランスなどヨーロッパ各国も反発。国連も「国際法違反だ」と批判しています。
トランプ大統領の発言を、専門家はどうみたのか。まず、アメリカ政治に詳しい専門家は…。
──トランプ大統領の“思惑”は?
アメリカ政治に詳しい 明海大学 小谷哲男教授
「ガザをどこよりも素晴らしいリゾートにするというアイデア。何より紛争の象徴であったガザを平和の象徴に変えていける。自分がガザに平和をもたらしたんだという方向性に持っていきたいんだと」
一方、中東情勢に詳しい専門家は…。
──トランプ氏の「ガザ所有」発言について
東京大学中東地域研究センター 鈴木啓之特任准教授
「ネタニヤフ首相としても、容易にはこの案に賛同しきれないという本音があるのではないかなと。イスラエルが望んでいたことではない提案が出てきてしまった。『異なる意見である』と若干曖昧な言い方をしている。戸惑いを感じた。周辺国・当事者を含め、この構想を受け入れるものが中東にいるのかと。今回の発言内容・構想が実現されるかは非常に疑問」
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トランプ政権によって、平和はもたらされるのでしょうか。
(2月5日放送『news zero』より)