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【解説】なぜ?イスラエルとパレスチナ 止まらない暴力の応酬

2023年10月8日 23:54
【解説】なぜ?イスラエルとパレスチナ 止まらない暴力の応酬
ハマスのロケット攻撃(10月7日)

中東パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織「ハマス」から大規模なロケット弾攻撃を受けたイスラエルは報復の空爆を行い、多くの犠牲者を出す軍事衝突に発展しています。そもそもなぜ今、どのような理由で衝突しているのでしょうか?

Q.そもそもイスラエルとパレスチナは、なぜ対立している?

A.
「パレスチナ」とは聖書で“乳と蜜の流れる土地”とたたえられる肥沃な土地で、かつてイスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒がアラビア語を共通言語として共存していました。しかしその後、ユダヤ人たちはヨーロッパ各地で差別や迫害にあい、19世紀ごろ、祖先の地に国をつくろうという「シオニズム運動」を始めました。

第二次世界大戦中、ナチスに迫害されたユダヤ人がパレスチナに国家を建設することに国際社会も同情的になります。1947年、国連でパレスチナの地をユダヤ人とアラブ人、それぞれの国に分割する「パレスチナ分割決議」が採択されると、翌年、ユダヤ人の国家「イスラエル」が建国されました。

しかし、この建国によって、元々その地に住んでいたパレスチナ人(アラブ人)は故郷を追われることになりました。パレスチナ人はヨルダン川西岸地区やガザ地区、ヨルダン、シリア、レバノンなどの近隣諸国に逃れたのです。

パレスチナ人は難民キャンプで苦しい生活を強いられます。パレスチナ人はイスラエルに反発し、彼らをアラブ諸国が支援して、イスラエルとの中東戦争が4回も繰り返されたのです。1973年に起きた第4次中東戦争から今年でちょうど50年、この時はオイルショックを引き起こし、日本にも大きな影響を与えました。

Q.今は、どういう状態?

A.
1993年には通称「オスロ合意」と呼ばれる歴史的な和平合意が結ばれました。敵対するイスラエルとPLO=パレスチナ解放機構がお互いに認め合い、イスラエルが占領していたガザ地区とヨルダン川西岸地区でパレスチナ人の暫定自治をスタートさせるというものです。

ところが、イスラム原理主義組織「ハマス」はパレスチナ全土を解放して独立国家をつくりたいと考えているため、「オスロ合意」を認めていません。そこでハマスが2007年、ガザ地区全域を奪い、実効支配しているのです。

Q.そもそも「ハマス」って?

A.
ハマスは、イスラム的な思想に基づく統治を目指している組織で、「パレスチナの地は自分たちのものだ」と考えています。このため、彼らにとって自分たちの土地を取り返すためにイスラエルと戦うことは「ジハード(聖戦)」だとしているのです。「ジハードで命を落とせば、天国に行ける」という考えから、自爆テロが数多く発生しています。こうした自爆テロなどを繰り返してきたため、欧米はハマスを「テロ組織」と認定しています。

Q.ハマスはなぜ今、攻撃してきた?

A.
攻撃があった7日、イスラエルではユダヤ教の祝日でした。お祭りムードの中、不意打ちにあったかたちです。

実は1973年に起きた第四次中東戦争も、祝日の10月6日に始まっています。

「イスラエルはハマスなどの動向は常に把握していたはずなのに、なぜ奇襲を許したのか」という声も上がっています。

Q.ハマスが攻撃してきた理由は?

A.
今年7月にイスラエル軍がヨルダン川西岸のジェニンにある難民キャンプを攻撃し、民間人を含むパレスチナ人が200人以上、死亡しています。これにハマスは強く反発していました。

もう1つ、イスラエルがサウジアラビアなど、他のアラブ諸国との関係正常化を進めていたことについて、ハマスが「アラブ諸国から見捨てられるのではないか」という焦りを感じていたという見方も出ています。

Q.今後、どうなる?

A.
今回はハマスの攻撃の規模が大きく、イスラエル軍の兵士や民間人も数多く人質にとられているとみられています。今後、これに対してイスラエル軍が大規模な軍事作戦を行う可能性があり、事態がどこまで緊迫化し、長期化するか、見通せない状況です。