ストライキ1か月以上続く アメリカで俳優らが危機感…映画製作にAI活用 最新現場を取材
アメリカで俳優らが1か月以上、ストライキを続けています。ストライキで求めていることの1つが映画製作にAIを活用することの制限です。「仕事を奪われる」という危機感を生んでいるAI技術。最新の製作現場を取材しました。
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アメリカの俳優らが待遇改善などを求めて、ストライキを1か月以上続けています。俳優たちが求めていることの1つが、急速に拡大するAI(=人工知能)の映画製作への活用を制限することです。
「マイノリティ・リポート」などに出演したコリン・ファレルさんは「私たちをスキャンしてAIで何にでも使おうとしている。ばかげている」と訴えていました。
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俳優たちが反対するAI技術。映画製作の現場では既に使われ始めていました。
ONEDOOR STUDIOS ダン・コブ氏
「ここではAIが作ったキャラクターをもとに、動きのある映像にしていく作業を行っています」
行われていたのは、人間の表情などを撮影する作業です。AIでつくられたキャラクターは表情が不自然になってしまうため、人間の表情を学習させるのだといいます。
さらに――
ONEDOOR STUDIOS ダン・コブ氏
「AIの音声の上に、本物の音声を加えることができます」
そして、背景などを組み合わせると、実写と見まごうような映像ができあがります。こうしたAIによる映画製作で、俳優たちが心配しているのが…。
ONEDOOR STUDIOS ダン・コブ氏
「(姿を)あとで、実際に映画に出演する俳優や女優にかえることができます」
今後、カメラで読み取った本物の俳優の容姿にAIで動きなどをつけて、実写のような映画を作ることができるようになるといいます。
ONEDOOR STUDIOS ダン・コブ氏
「AIはこの顔を認識するように訓練され、次のシナリオでもそれを繰り返すようになります」
AIを使うことで、俳優たちを長時間拘束することなく、映画が製作できるようになるのです。
ONEDOOR STUDIOS ダン・コブ氏
「コストが削減できます。でもそれ以上に、(AIで)より良い作品に仕上がると考えている。(AIは)リスクが高く撮影が難しいシーンも作り出すことができます」
これまで平均で85億円ほどかかったという映画製作費を4分の1程度に抑え、もっと多くの映画を世に送り出したいと話します。
一方で専門家は、映画製作へのAI活用には何らかの規制が必要だと指摘します。
エンターテインメント業界に詳しいハンデル弁護士
「(AI活用に)制限がなければ、俳優が仕事を失ったり、雇用が短時間になってしまったりする可能性があると思う」
俳優らの組合によると、俳優の代わりにAIに仕事をさせないことを求める組合側に対し、ディズニーなどの大手製作会社側は、1日分の出演料で俳優の肖像権を使えるようにすることなどを求めていて、交渉は決裂しています。
スト参加者(米・ロサンゼルス 22日)
「エキストラなら仕事を奪われてしまう」
グーニーズやロード・オブ・ザ・リングなどに出演したショーン・アスティンさんは、「私をスキャンして新しいキャラクターを作るなら、ちゃんと報酬を支払うべきだ」と話します。(米・ロサンゼルス 22日)
ストは今後、数か月にわたって続くとの見方もあり、映画の興行や配信の遅れといった影響は続きそうです。