ロシアが軍事侵攻開始か…米バイデン政権の動きは?<米軍、大統領の姿勢、経済制裁、情報戦>
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まったとみられる中、アメリカのバイデン大統領は、ホワイトハウスにいます。シチュエーションルームと呼ばれる地下の部屋で、状況を注視しているものとみられます。
また、ブリンケン国務長官やサリバン大統領補佐官、オースティン国防長官、軍トップのミリー統合参謀本部議長らと電話で対応を協議したことが明らかになっています。
▼23日の動き
最新のバイデン政権の動きですが、プーチン大統領が親ロシア派地域の独立を承認し、ロシア軍の派遣を命じたことを受けて、第一弾となる対ロシア制裁を発表したばかりでした。
また、バイデン大統領は、「侵攻のはじまり」と表現して、ロシア軍の動きを強くけん制していましたが、結局、大規模な軍事侵攻、という形になりました。
▼米軍の動き
今後のバイデン政権ですが、バイデン大統領はすでに、「アメリカ軍がウクライナで戦うことはない」「アメリカ軍はウクライナに派遣しない」と表明しています。
アメリカ軍は、東ヨーロッパのポーランドやルーマニアなどウクライナの周辺国に増派していますが、新たに配置転換で、バルト3国の防衛も強化を決めたばかりでした。
▼バイデン大統領の姿勢
今回、バイデン大統領は、一貫して、アメリカ軍の派遣には及び腰でした。
去年12月8日には、ロシア軍がウクライナに侵攻した場合の対応を問われて「アメリカ軍が単独で、軍事力を使うことは検討していない」とウクライナへのアメリカ軍単独派遣を早々に否定しました。
また、今月10日にもNBCテレビのインタビューで、アメリカ国民の救出のためであってもウクライナへの軍の派遣はしない、と否定して、その理由を「米露で撃ち合えば、世界大戦になってしまう」と述べていました。
バイデン大統領は、副大統領時代から、アフガニスタンへのアメリカ軍の派遣にも否定的で、実際、去年、撤退を実現しました。
政権は「中国を唯一の競争相手」と位置づけて、対中国にシフトする戦略を描いていて、当初は、ロシアとはできるだけ安定的な関係を築きたいと考えていましたが、完全に逆の形になりました。
バイデン大統領は、去年6月にスイスでプーチン大統領と対面で会談していますが、ある外交筋は、「スイスでの首脳会談で、バイデン氏は、プーチン氏から戦争できない大統領だと見透かされた」と分析しています。
▼経済制裁
今後は、アメリカやヨーロッパなどの追加制裁も焦点ですが、バイデン政権としては、第一弾の制裁に加えて、ハイテク機器の輸出規制などを検討しています。
また、プーチン大統領個人の資産凍結も検討されているほか、スイフトと呼ばれる世界の銀行の決済システムからロシアを排除する案も挙がりましたが、アメリカ政府高官は、難しいとの認識を示しています。
また、これまでにドイツ政府が、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン、ノルドストリーム2の稼働を凍結も打ち出していますが、ヨーロッパとアメリカが足並みをそろえて、制裁を行えるかも焦点になります。
また攻撃直後から、エネルギー価格がさらに高騰していて、国内のインフレに苦しむバイデン政権としては、今回の軍事侵攻で、国内的なダメージも受けそうです。
▼情報戦
今回アメリカは、情報機関などが入手したロシア側の情報をできるだけ発信することで、プーチン大統領らロシア政府にプレッシャーをかけてきました。
中でも、バイデン大統領は17日に記者団のカメラの前で、ロシアによるウクライナ侵攻は、「数日以内に起こりうる」と発言、ブリンケン国務長官も同じ「数日以内」との表現で、警告するなど、機密情報を基にしたとみられる積極発信で、プーチン大統領の手の内を暴露し、打つ手に制約をかける可能性を追求してきました。
しかし結局、軍事侵攻は止められませんでした。