やりたい放題?心配の声も……トランプ氏“圧勝”でどうなる?【#みんなのギモン】
◇ブレーキ「不在」 暴走止めるのは?
◇それでも…米国民なぜトランプ氏?
日本テレビ 小林史解説委員
「歴史的な大接戦と言われながら、ふたを開けてみるとこの結果。驚いたという人、やっぱりという人がいると思います。日本時間7日午後4時時点で開票はまだ続いていますが、トランプ氏は今回、結果が判明している『激戦州』すべてで勝利しました。『全米の得票数』もハリス氏を比べて470万票の差をつけて圧勝しています。さらに、大統領選と同時に行われる議会選挙でも共和党はすでに上院で勝利。下院でも過半数まであと9議席というところまで迫っています」
「大統領がいるホワイトハウスと議会の上院と下院、この3つをすべて共和党がおさえることを、共和党のシンボルカラーの赤にちなんで『トリプルレッド』といいます。こうなると議会の抵抗もないので、トランプ次期大統領のやりたい放題になるのではないかという懸念の声も上がっています」
鈴江奈々キャスター
「やりたい放題という言葉はネガティブにも捉えられますが、やるべき政策を推進できるということも言えますね」
森圭介キャスター
「それもアメリカ国民が選んだ結果ということですね」
小林史解説委員
「現在、トランプ氏の周囲を取り巻く注目の人物からみていきます。世界的起業家で『テスラ』などのトップのイーロン・マスク氏。この選挙戦中にもトランプ氏支持を表明していて、現地メディアによると、約200億円もの献金でトランプ氏を全面的にバックアップしていました。トランプ氏の当選が濃厚になると、テスラの株価は一時、15%も上昇したんです」
桐谷美玲キャスター
「イーロン・マスク氏は要職に就くとみられているのですか?」
小林史解説委員
「トランプ氏のこれまでの発言によると、『政府効率化委員会』という新たなポストをつくって、マスク氏をここトップに就けるという可能性があります。これがどういうものかというと、言ってみれば“コストカット大臣”みたいなポジションとして、マスク氏の経営手腕で連邦政府のムダを徹底的に洗い出してほしいという思惑があるのかもしれません」
「ただ、マスク氏といえばSNSの『Twitter(現X)』を買収した直後に従業員の半数以上を解雇したことも話題になりました。アメリカメディアは、トランプ氏が就任後に忠誠を誓わない政府職員を『解雇する』という可能性を伝えていています。こんな話を聞くと政府職員は気が気じゃないですね」
小林史解説委員
「続いてのトランプ氏を取り巻く注目の人物は、ロバート・ケネディ・ジュニア氏です。ジョン・F・ケネディ元大統領の甥にあたる人ですが、『反ワクチン』の『陰謀論者』として知られています。ジュニア氏をトランプ氏は次期政権で『公衆衛生を統括する役職』に起用するとみられています」
忽滑谷こころアナウンサー
「ワクチンを打つ打たないは個人の自由だと思いますが、『公衆衛生を統括する役職』にこういった人が就いたときに、どういう舵取りをするのかは気になります」
小林史解説委員
「ジュニア氏は6日のインタビューでワクチン全般の安全性や有効性についての調査に『直ちに取り組む』と言っています。その一方で、『誰からもワクチンを奪うつもりはない』とも表明したということです」
小林史解説委員
「そしてもう一人。トランプ氏にとって最も重要な側近といえるのが、副大統領に就任するJ・D・バンス氏です。中西部の『白人』『貧困家庭』に生まれたということを強調しています。その生い立ちを振り返った回顧録が大ヒットしたベストセラー作家として知られています。ただこの人はもともとは『反トランプ』で、トランプ氏を『バカなやつ』『アメリカのヒトラーだ』と表現したこともあったといいます」
「現在40歳のバンス氏ですが、『ミニトランプ』と言われるほどトランプ氏の政策にほぼ賛同しているという、かなりがらっと主張を変えた人です。ただ、過去にハリス副大統領らを『子どものいない惨めな人生を送るキャット・レディー』などと中傷していた動画が掘り起こされ批判が殺到したりしました。キャット・レディーとは『社会的に孤立した女性』『変わり者』など、侮辱的な意味あいで使われることが多いスラングです」
桐谷美玲キャスター
「こういう人たちがこれから4年間、新しい政権を支えるんですね?」
小林史解説委員
「『トランプ一強』の政権になりそうな中、周囲はトランプ氏の『イエスマン』ばかりで一定の歯止めをかけるブレーキ役が見当たらない状態です。1期目よりもさらにトランプ氏らしく、アメリカの独り勝ち、アメリカファーストというのを推し進めるのではないかと心配の声が上がっています。
■トランプ氏“圧勝”の背景に何が?
鈴江奈々キャスター
「アメリカ国民がトランプ氏を支持した背景には何があったのでしょうか?」
小林史解説委員
「今回、トランプ氏を支持した人というのは、大きく2つのグループにわけられると思います。一つは、『積極的』にトランプ氏が好きな人たちです。世界ではアメリカ一強の時代が終わる中、自分たちが経済発展やグローバル化の流れから取り残されていると不安に感じている人々です。主に農業や製造業などで働く低所得者層に多く、トランプ氏がかつてのような『強く豊かなアメリカ』を取り戻してくれると信じ続けている、いわゆる『岩盤支持層』と呼ばれる人々です」
「もう一つは、『消極的』に支持する人々です。現在のインフレがもう我慢できない、日々の生活に大きな打撃となっていて、貧困や格差は拡大しています。それなのにこの4年間、現政権は何も有効な手立てを打てていない、副大統領であるハリス氏は何をしていたんだと怒っている人々です。トランプ氏を積極的に『好き』というわけではないが、現状を変えてくれるのは、どちらかと言えばトランプ氏だと。今回の選挙ではこうした層が広がっていて、従来なら民主党を支持していた若者や黒人、ヒスパニック、中でも特に男性の票がトランプ氏に流れたとみられています」
鈴江奈々キャスター
「アメリカ社会にあった不満が変化を求めた。日本も世界もそのアメリカの変化にこれから対応していく必要がありそうですね」
小林史解説委員
「もともと言動が予測できないトランプ氏がさらに大胆にやりたい放題となりそうな第二次トランプ政権。日本を含む国際社会は早くも身構えています」
(2024年11月7日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)