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人気ラッパー・ドレイクのAI音声使った“新曲”が数百万回再生 音楽業界にとって“深刻な事態”

2023年4月21日 11:13
人気ラッパー・ドレイクのAI音声使った“新曲”が数百万回再生 音楽業界にとって“深刻な事態”
音源をアップした、“ゴーストライター”のアカウント

AIなどの技術を使い、人気アーティストの声を用いて本来歌っていない曲を歌ったようにした動画がインターネット上で数多く出回っている。AIのホイットニー・ヒューストンが、マライア・キャリーのヒット曲をカバーしたり、AIのリアーナがビヨンセの曲を歌い上げたりするなどがその例だ。

そんな中、今週ある曲がアメリカで大きな話題となった。人気ラッパーのドレイクと人気シンガーのザ・ウィークエンドがコラボした完全な“新曲”。本人が歌っているのではなく声はAIで、曲はイチから作曲されたものだという。

新曲を公開したのは、「ゴーストライター」と名乗るアカウント。スポティファイやユーチューブ、TikTokなどにアップロードされ、削除されるまでのわずか数日で再生数は数百万回にのぼった。実際に聞いてみると、声はドレイク、ザ・ウィークエンドとそっくりで、AIが携わったとは思えないほどの出来映えと感じる。

いったい誰が音源を制作しているのか。ネット上に公開された“新曲”はユニバーサル ミュージックの申し立てを受け、すでに削除されている。

音源をアップロードした「ゴーストライター」を名乗るアカウントは、「私は何年もゴーストライターとして働き、大手レコードレーベルに収益をもたらしたが、給料は無いに等しかった。ついに未来がきた」「これは始まりに過ぎない」とコメントを書き込んでいる。

ニューヨーク・タイムズは匿名の制作者が、スポティファイなどの公式ストリーミングサービスで数百万回の再生回数をたたき出したことは、音楽業界にとって深刻な事態だと評した。AIを使うことでラップのビートや映画音楽などの作曲は可能になっていて、現役ミュージシャンの収入はすでに減っていると指摘。

さらに専門家の話として「人間が作った音楽を聴くこと、創作活動は特別なスキルでそれを生業とできるなど、当たり前だと思っていることがAIによって危機にさらされている」と分析する。

ドレイクとザ・ウィークエンドと契約を結ぶユニバーサル ミュージックは声明を出し、「音楽産業に携わる我々は、ファンやアーティストなどの創造的表現の側と、偽物や詐欺でアーティストに報酬を拒否する側、どちらに立ちたいのか」と問いかけた。

AIが、アーティストのクリエイティビティを陵駕しかねない時代が目の前までやってきていると感じさせられた今回の出来事。消費者である私たちは今後どんな音楽を選択するのか。