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主要新興国がロシアに集結「BRICS」首脳会議 プーチン氏「外交的勝利」アピールも成果乏しく

2024年10月26日 1:39
主要新興国がロシアに集結「BRICS」首脳会議 プーチン氏「外交的勝利」アピールも成果乏しく
プレスセンター

ロシア中部で今週、新興国30か国以上が集結し「BRICS」首脳会議が開催された。プーチン大統領を各国の首脳らが取り囲む様子は、西側諸国に対する「外交的な勝利」をアピールする結果となった。一方で、実質的な成果は乏しいとの指摘もある。(NNNカザン 平山晃一)

■街は厳戒態勢…約2万人の外交関係者がロシア入り

ロシア中部の街・カザンで開催された今回の首脳会議。街は厳戒態勢で、私たちが宿泊した中心部のホテルの周りには、数十メートルに1人、警察官が立って警戒に当たっていた。会場に入るためには2回の荷物チェックを受ける必要があり、長蛇の列ができていた。

またロシアでは、こうした国際会議への入場のためには、いまだにPCR検査を受ける必要がある。プレスセンターの横にはPCR検査場が設置されていて、コロナ禍を思い出させる風景が広がっている。

ロシアメディアによると、今回の首脳会議には各国からおよそ2万人の外交関係者がロシア入りした。また、59か国からおよそ2000人の報道関係者が取材に訪れたとしている。

プレスセンターには各国の民族衣装に身を包んだ記者もいて、非常に国際色豊かな場所だと感じられた。ロシア側は、私たち日本メディアを含む非友好国のメディアの取材も認めていて、幅広く首脳会議の成果をアピールする狙いがあったとみられる。

■プーチン氏は各国の代表を前に、ウクライナ侵攻でも持論展開

経済・金融協力が主要テーマとなる中でも、プーチン氏はウクライナ侵攻をめぐる持論を展開する場面もあった。

30か国以上の代表を前に、西側諸国を批判し「ウクライナはロシアに脅威を与えるために利用されている」「彼らは我が国に戦略的敗北を与えるという目標を隠していない」などと主張した。自国の立場をアピールする場として、首脳会議をいわば利用した形だ。

また、「西側諸国が民主主義と人権の名のもと、違法な経済制裁や内政干渉を行っている」と強調していて、BRICSを反欧米勢力結集の場にしたい狙いがみえる。

■ロシア国内でイメージ戦略も…大統領府からの“指示書”とは

BRICS首脳会議には、35か国と6つの国際機関が代表団を送っている。プーチン氏としては、それだけ多くの国が集まった事実をもって「外交的勝利」だと位置づけている。

また、ロシアの独立系メディアは24日、ロシア国内での報道に関する大統領府の“指示書”を入手したと伝えた。それによると、特に以下の3点を重視して報じるよう指示が出ているという。

1.プーチン氏は「世界の大多数にとっての事実上のリーダー」
2.西側諸国のエリートたちは「パニックに陥っている」
3.西側諸国は「不安に悩まされている」

また、首脳会議には全世界が注目していて、ロシアを孤立化させようとする西側の試みは失敗したと報じるよう求めている。

■西側はBRICSをどう見たか…「ショーとしては成功」との声も

欧米の主要メディアの記者は「ショーとしては成功」と冷めた見方を示しつつも、「ロシアが孤立していないことは一目瞭然だ」と話していて、欧米が当初、見込んでいた「ロシア包囲網」が成功していない点は認めざるを得ないという感想だった。

■一枚岩ではないBRICS…実質的な成果に乏しいとの指摘も

欧米の経済制裁を受けるプーチン氏は、BRICSの枠組みを通じて、貿易における脱ドル決済を進めたい考えだ。西側諸国が「ドルを武器として利用している」と非難し、首脳らの共同宣言でも、欧米による経済制裁は違法だとして、その影響に深い懸念を表明する内容が盛り込まれた。

一方でアメリカのワシントン・ポスト紙は24日、ロシアが、自国が排除された国際決済システムSWIFTの代替システムを提案するも、支持が広がらなかったと報じた。主にロシアやイランが利益を得るもので、他国には関心がないとしている。

今回から9か国となったBRICSは、新たにパートナー国を創設し、拡大を続けている。中には欧米に近い国もあり、反欧米陣営としたいプーチン氏の思惑通りにはいかなそうだ。

最終更新日:2024年10月26日 2:35