「死傷者出たことは遺憾」“ロシア支持”の中国に変化 思惑は…
ウクライナ侵攻で世界各国から制裁をうけるロシアが今後、さらに重要視するとみられるのが中国との関係です。中国では、ロシア支持の動きがみられる一方、ここにきて変化も見えはじめています。
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4日夜、開幕する北京パラリンピック。ロシアとベラルーシの選手が除外されるなど、ウクライナ侵攻が“平和の祭典”に暗い影を落としています。
2日、北京の大使館が集まるエリアでは、カナダ大使館の壁に大きなボードとともに、「私たちはウクライナとともにある」というメッセージが掲げられていました。
ところが3日、再び訪れると、ボードの下の部分に目隠しがされ、赤いインクのようなものが見えていました。
何者かが、NATO(=北大西洋条約機構)を冒瀆(ぼうとく)する落書きをしたとみられ、急きょ、覆い隠す事態となっています。
また、ネット上ではある異変が起きています。
ロシア大使館が公認している「ロシア国家館」という名前の中国の通販サイトでは、中国でロシア支援の動きが広がっていることで、次々と商品が売り切れています。3日前に7000人だったフォロワーが、4日の時点で、150万人に急増していました。
ロシア支持の動きが広がる中、ロシアの品物を扱う店には、ロシア産の小麦が置かれていましたが、今後、増えていく可能性があります。
西側諸国が経済制裁に踏み切る中、中国政府は「ロシア産小麦の輸入を拡大する」と発表。経済を支援する狙いがあります。
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ロシア寄りの姿勢を政府が示す中、反戦を訴える市民もいます。
北京在住の男性
「すべての人は戦争に反対するべきです。多くのネットユーザーと中国国民は、戦争に反対し平和を愛していると信じています」
男性は、主張を伝えるため動画をSNSに投稿しましたが、突然、削除されてしまったといいます。言論統制の一環とみられます。
北京在住の男性
「私は多様な声の発信を認めるべきだと思います。そうすれば、私たちの社会は、より健全になるはずなのです」
他にも侵攻に関する投稿はあがっていますが、相次いで削除されています。
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ロシア寄りの姿勢は崩さない中国ですが、ここにきて変化も見え始めています。
今月1日、中国外務省の会見では、「死傷者が出たことは遺憾だ。現在の情勢はわれわれが望まないものだ」と、国際世論に寄り添うようなメッセージも出しました。
国際世論に寄り添うようなメッセージも出し始めた中国について専門家は――
現代中国に詳しい神田外語大学興梠一郎教授
「国際世論が非常にロシアに厳しくなっていて、やっぱり『中国はロシアを支援している』話になると責任を問われる。ですから微妙に綱渡りというか、戦況の変化を見ながら発言内容も微妙に変化している」
その一方で、ウクライナのように武力を行使するのではと懸念されているのが台湾です。
侵攻が始まった同じ日、中国の軍用機が台湾の防空識別圏に進入。共産党系メディアは「アメリカが兵を出して台湾を助けるなんて妄想にすぎない」との記事を掲載しました。
ウクライナにアメリカが派兵しなかったことを引き合いに出し、台湾の動揺を狙っているとみられます。
現代中国に詳しい神田外語大学興梠一郎教授
「アメリカがどうするかっていうことは(中国が)当然宣伝で利用できる。いざとなったら『アメリカは助けに来ないんじゃないか』という宣伝が始まる」
国内外の世論をにらみながらウクライナ情勢への対応を模索する中国。5日から始まる全人代では、どのような外交姿勢を示すのか、注目されています。