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核戦争のリスク高まる中、かつての“秘密の町”は・・・核兵器の材料「トリチウム」増産の動きも

2022年8月6日 23:00
核戦争のリスク高まる中、かつての“秘密の町”は・・・核兵器の材料「トリチウム」増産の動きも
ワッツバー原発は核兵器に必要な「トリチウム」増産

アメリカ・ニューヨークの国連本部でNPT=核拡散防止条約の再検討会議が開かれている。核軍縮に向け、各国が一致することができるのか。ウクライナ情勢を受け、核戦争へのリスクが最も高まっていると指摘される中、アメリカにある“核の町”を取材した。

■“地下核シェルター”工場へ・・・問い合わせが急増

アメリカ・テキサス州ダラスから車で1時間強ほどのところにある高速道路沿いの工場を訪れると、コンテナのような黒い箱が十数個ずらりと並べられていた。実は、これらは攻撃があった時の備えとしての地下シェルターで、溶接や内装作業が急ピッチで進められている。

その中の一つ、広さ46平方メートルの地下シェルターの中を特別に見せてもらった。扉を開けるとキッチン、そしてトイレやシャワーなどの生活スペースがあり、太陽発電機や空気フィルターといった、有事の際に数日過ごすことが出来る機器が設置されている。さらに、クローゼットが隠し扉になった奥にはベッドルームがあり、およそ10人が生活できる空間になっていた。ベッドの上には緊急脱出口も設けられている。地下シェルターの価格帯は、日本円でおよそ600万円から1億円と安くない値段であるが、ウクライナ侵攻で、プーチン大統領が核兵器使用も辞さない姿勢を示す中、問い合わせが急増しているという。

ーーシェルター製造販売会社 ライジング・エス・カンパニーゲイリー・リンチ社長

「核兵器が使用された場合放射性物質から身を守るためにシェルターは設計されています。通常であれば50~100件の問い合わせがあるところ、侵攻直後は300件を超える問い合わせがありました。」

問い合わせはアメリカ国内のみならず、日本や韓国からもあり、ゲイリー社長は「キューバ危機以来こんなことはなかった」と話す。

核への備えの一方で、核兵器増産とみられる動きもある。

■広島原爆を開発した“核の町”は今も核関連施設が立ち並ぶ

広島に投下された原爆「リトルボーイ」に使われたウラン濃縮工場があったテネシー州・オークリッジ。当時、町の存在は秘密にされていたため「シークレットシティ」と今でも呼ばれている。

町の博物館には広島原爆の模型と開発の歴史が展示されているが、広島・長崎への被害への言及はごくわずかに留まっていた。

館内には、さらにこの町で最近製造された核爆弾の先頭の外側部分も置かれている。

実はオークリッジには今もエネルギー省国家核安全保障局の核関連施設があり、周辺には原子力関連企業が集まっている“核の町”なのだ。

かつての“地図に載らない隠された町”にある博物館は、今ではその歴史と原子力や核兵器技術の重要性をアピールしている。

核兵器の材料を製造・保管している施設は「Y12(ワイ・トゥエルヴ)」と言われ、最も厳重に警備され、一般の人は一切近づくことができない。地図に載らない“秘密の町”核施設は、当時と変わらず谷の中にあって、遠くからのぞき見るのも難しいが、戦後76年以上たった7月末の朝の通勤時間帯は、厳重な検問所の前に施設へ向かう車の行列ができていた。

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■原発では「トリチウム」増産・・・核兵器増産か
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