「優しい大人たちへ。戦争を止めて」ウクライナに残る父親へ歌い続ける6歳少女の願い
ユニセフによると、ロシア軍の軍事侵攻後、ウクライナから周辺国に避難した子供は180万人以上にのぼっています。そのうちのひとり、ポーランドの国境近くの街で避難生活を送る6歳のアナスタシアちゃんは、ウクライナに残り戦う父親のため、毎日、歌を歌っています。
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ポーランド国境に押し寄せるウクライナの人々。国外に避難する人は連日、数万人にのぼり、その半数が子どもだといいます。
国境近くの街で避難生活を送る6歳のアナスタシアちゃんは、今月はじめ、母親と祖母と一緒にポーランドに逃れてボランティアの自宅に身を寄せています。
アナスタシアちゃん
「パパのために歌います。パパに聞こえるように歌いたい。パパと一緒に遊びたい」
ウクライナに残り戦う父親のため毎日、歌っています。
母・ナディアジダさん
「娘の歌を聴いて、戦争前の普通の生活が、いかに素晴らしかったか気づきました」
ポーランドの学校に通い始めたアナスタシアちゃん。新しい友達も増え、避難先での生活にも少しずつ慣れてきました。
心の支えとなっているのが、ウクライナに残る父親との電話です。
父親
「もしもし」
アナスタシアちゃん
「パパ、元気?」
父親
「うん、元気だよ」
アナスタシアちゃん
「学校には(ウクライナの)国旗がいっぱいあるんだよ」
「心配させたくない」との思いから、父親には弱音をはかないといいます。
アナスタシアちゃん
「おやすみなさい」
父親
「バイバイ、キスするね」
アナスタシアちゃん
「(ウクライナに)平和な空が訪れますように」
父親
「君たちにもね」
アナスタシアちゃん
「ポーランドの空は平和だよ」
そして父との電話の後には――
母・ナディアジダさん
「パパに会いたい?」
父を抱きしめるしぐさをするアナスタシアちゃんを、ナディアジダさんが抱きしめました。アナスタシアちゃんは気丈に振る舞いますが、それでも夜になると「ウクライナのおうちに戻りたい」と涙を流す日もあるといいます。
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戻りたくても戻れないふるさと。長引く避難生活に疲れも見え始めました。ある日、アナスタシアちゃんは「目が痛い」と訴え、地元の病院に向かいました。
母・ナディアジダさん
「娘は急に目が痛くなり、2日間、激痛が続いていました」
医師からは「目の炎症」と診断されました。
母・ナディアジダさん
「子どもの場合、簡単に感染してしまいます。衛生面で気をつけていませんでした」
慣れない環境での生活を強いられている子どもたち。身体だけでなく心の疲れも懸念されています。
夕暮れ時、アナスタシアちゃんが聞かせてくれたのは平和を思う歌です。
アナスタシアちゃん
「優しい大人たちへ、戦争を止めて。そして、あなたのため、春を色とりどりの星で飾ります」
母・ナディアジダさん
「アナスタシアも家族のことを恋しく思っている」
「ウクライナの家へ戻って、また歌を歌おうね」とアナスタシアちゃんにと語りかける母のナディアジダさん。
父親のため、平和を願って歌い続けるアナスタシアちゃん。離ればなれの生活が終わる兆しはまだ見えていません。